秀ポン

アオラレの秀ポンのレビュー・感想・評価

アオラレ(2020年製作の映画)
3.6
テンポが良くて面白かった。

主人公もそれを襲う男も、同じように、上手くいかない人生に疲弊して苛立っている。同族同士で潰しあう不毛さがこの映画の肝だと思った。(だから主人公は人生うまくいってちゃいけないし、品行方正で純然たる被害者であっちゃいけない。)

つまり、男的には自分の人生をクソみたいにしやがる社会に反撃!って感じなんだろうけど、その社会を構成する人間の大半は自分と同じようにクソみたいな人生を送ってる。で、それは主人公も同様だ。
自分の人生の問題に対峙しても特に良くなる見込みはないので、手近でムカつく奴にクラクションを鳴らし、それにキレて煽り運転を始める。なんて不毛な地獄だ。(しかしそうせざるを得ない気持ちは痛いほど分かる。)

なので、主人公が男との戦いに勝とうが、別にこれで彼女の人生が好転するわけじゃない。元夫は今まで通り家を奪おうとしてくるし、母親の認知症問題も何も解決してない。
ただ今回の件を教訓に、彼女が同族に当たることは無くなって、その結果僅かばかりではあるけど周囲の人間の疲弊も減るのかもしれない。
みたいな。

主人公が教訓を得るオチに関しては特に思うことはなかった(「いい話で終わって良かったな」とは思った)けど、全編通した不毛さに関しては身に覚えがあったりして面白かった。僕はレジ前でモタモタしている人にイライラする。これも不毛な苛立ちだ。

──ラッセルクロウについて
ラッセルクロウは凶暴な男にハマりすぎてて、こいつ普段からこんなだろと思った。人との距離感バグってる大柄な男がこっちに話しかけてくるの怖すぎる。

それに、突発的に始まった反撃の割には男が意外と手際良くて、趣向も凝らしているのがだいぶ面白かった。多分こいつは前々からこういう事態をシュミレーションしてる。
(面白半分に煽るとかじゃなく、自分の全存在を懸けて煽ってくるのに好感が持てた。悪事に真摯な悪役は見ていて気持ちが良い。)


・車内で他の車に悪態をつく空気が苦手なので、序盤のリアルすぎる車内の様子がキツくて吹き替えで見れなかった。

・途中、電話帳の中から誰を殺すか選べと言われた主人公が自分をクビにした上司を選んだ辺りで、主人公が男を使って自分の苛立ちを解消していく展開になったりするのかなと思ったけど、特にそう言う感じではなかった。
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