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BECKY ベッキーのBuffysMovieのレビュー・感想・評価

BECKY ベッキー(2020年製作の映画)
4.6
冒頭では刑務所と学校が対比で同じ構図に描かれる。ベッキーにとって学校は退屈な刑務所のような場所ということを暗示しており、いつも心ここにあらずで笑顔をみせないベッキーは唯一、スマホの中にある病気で亡くなった母親の映像を見ているときだけは笑顔をみせる。

関係修復のために週末に訪れた、かつて家族で過ごした思い出のある湖のある家。しかし、そこに訪れたのは、父親の新しいガールフレンドだった…とここまでは、思春期、反抗期、母親のいない空白感を抱える少女の内面を描いた作品として、よくありがちな展開である。

並行して刑務所から護送中のネオナチのドミニックが看守を殺し、一緒に護送されていた数人を連れて逃亡する。このネオナチを演じているのは、ケヴィン・ジェームズというから驚きだ。ケヴィン・ジェームズといえば『サンディ・ウェクスラー』『ピクセル』『アダルトボーイ青春白書』といった、アダム・サンドラー主演映画には、準レギュラーとして出演している、完全にコメディ寄りな俳優である。そんなケヴィン・ジェームズが殺人にも抵抗がない極悪非道なネオナチを演じているのだ。

逃亡犯たちは、ベッキー達が週末を過ごす家に現れ、案の定ベッキーの父とガールフレンドとその息子は捕まってしまうが、ベッキーだけは敷地内にある別の小屋にいたため、捕まらないで済んだのだ。

ここからネオナチ逃亡犯と13歳の反抗期少女との対決が勃発していくのだが、ある出来事が引き金となり、ベッキーがどんどん変貌していくことになる。

ベッキーが逃亡犯と戦うスキルはないが、13歳らしいアイテム、色鉛筆や定規といったものを使用したり、罠にかけたりといった子供らしい発想の戦い方をするという点で『ホームアローン』のようなイメージを受けるかもしれいが、そんないたずらの延長線で戦うような子供向けアドベンチャー映画ではなく、色鉛筆や定規で相手の首をめった刺しにして殺したり、ボートのモーター部分を押し当てたり…更にはそれ以上のゴア描写満点な方法と残虐非道なスタイルで1人ずつ殺していく。

子供のころに尖ったものを持っていたら、「人に刺さったらどうするの!」なんて言われたことがあるかもしれないが、今作はそのアンサーともなっている。子供に尖ったものを持たせてはいけない!!

逃亡犯の中に、WWEの「クルーガン」ことロバート・マイエが演じる子供に手を出すことに抵抗がある男アペックスがいて、ベッキー達のところに来る前に仕方なく子供を殺してしまった罪悪感からも、ベッキーを追い詰めるものの、わざと逃がしてしまう。捕まっている父親のガールフレンドにも情けをかけたり、非道なドミニックと対立することもある。

中盤からは、アペックスの視点も入るようになり、情状酌量の余地もあるキャラクターであると感じさせられるが、ベッキーにとってはそんなことは関係なく、いくら情けをかけられて、最終的にドミニックとの対決でもベッキー側につくものの、「そんなの関係ない!制裁だ!!」と言わんばかりなベッキーの行為に、前半と後半では恐怖が位置している視点がひっくり返ってしまっていることに気づかされる。

主人公で観ている側が応援すべきキャラクターが最終的にサイコパスとして覚醒していく過程をみせられているようで、複雑な気分になる。

グミを好んで食べるしぐさなどは可愛らしい女の子だが、ラストでみせる表情は寒気すら感じるだろう。

『アナベル 死霊人形の誕生』『NY心霊捜査官』など幼少期からホラー映画への出演率の高いルル・ウィルソンのあどけない少女の顔が血まみれになり変貌していくときの目力の凄さには圧倒されるだろう。

もし続編があるとしたら、ベッキーが殺人鬼に成長してしまった物語になるに違いない..
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