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Programme Nadar(原題)の南のレビュー・感想・評価

Programme Nadar(原題)(1896年製作の映画)
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ナダールはリュミエール同様、「光と感光剤で絵を描く」文化において重要な人物の一人。

『Films de Paul Nadar』は、その息子ポール・ナダールが1898〜1896年までに撮影した短編のコンピレーションです。

サーペンタインダンスはモダンダンスの先駆者ロイ・フラーが発明し、舞台だけでなく初期映画でもしばしば扱われました。

有名なのはエジソンスタジオとリュミエール兄弟による記録ですが、今作にも収録されています。

アトラクションとしての映画の需要が大きかった当時、身体と衣装のダイナミックな演技が魅力のサーペンタインダンスは格好のプログラムだったのでしょう。

殷賑を極める19世紀末のコンコルド広場の光景も、価値ある歴史資料です。

「交通整理」という概念がまだ無かったのか、縦横無尽に大通りを行き交う大勢の人、馬、人、馬、人、馬。

「渋谷のスクランブル交差点に信号も横断歩道も無かったら?」

そう考えると恐ろしいですが、まさにそんな感じの映像です。

前半に収められたいくつかのダンス映像と遜色ないほどスペクタクルとして成立しており、「この歩行者たち馬車に轢かれんのやろか…」とハラハラさせるサスペンス性も備えています。

時の経過により「時代ごとの差分」という味わいが出てくるので、昔の記録や文物って何だかウイスキーみたいだなと思います。

100年後の人々が21世紀初頭の映像を見てもきっと驚くでしょうからね。

「なんで電車にホームドアついてないの!?危な…!」

「ていうか道路も人間と車がすれすれで行き交ってんじゃん…!そりゃ交通事故起こるでしょ…」

みたいに。
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