安堵霊タラコフスキー

夜よ、こんにちはの安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

夜よ、こんにちは(2003年製作の映画)
4.3
マルコ・ベロッキオは映像にあまり作家性が感じられなくて作品を敬遠してたけど、甘き人生の映像が良さ気だから評価の高いこの作品を試しに鑑賞してみて、なるほどこれも映像の完成度は非常に高かった

まず画質が変に古臭いなと思ったら実は70年代を舞台にしていたということでそこに感心し、音に関しても途中で聖歌っぽい音楽が流れたりして不思議なものがあり、主人公がテロリストとわかるシーンも直接映さないところにスマートさが感じられたりと、冒頭十数分で洗練された演出に魅了された

そしてテロリストと誘拐した政治家の関係を描いた物語がメインとはいえ、その監禁した政治家を覗き穴から見たり見られたりする緊張感ある演出やレイアウトがやけに美しい図書館等、画作りに力を入れている箇所が目立っていた点は映像至上主義の身としても実に満足のいくものだった

ラストもカナリアが伏線になっててなんとなく予想はできたけど実際見たら解放感あるな……と思いきやの意外性があるものだったのには正直平伏したのと同時に事実に囚われない想像力と良心に溢れる演出には感動を覚えた

作品としても素晴らしかったが、中国は近いのような共産主義にお熱な映画を作った監督とは思えない、共産主義批判を含む作品をベロッキオが作ったことにも彼の心境の変化が表れていて、色んな意味で興味深い作品になっていた

ところでここだけの話、前日にモアを見ていたせいで最後にこっちでもピンクフロイドが流れた偶然には少し驚いた