竹野康治郎

ヤクザと家族 The Familyの竹野康治郎のレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
4.0
日本アカデミー作品賞「新聞記者」の藤井監督の最新作になります。脚本も務め、非常に考え深く、善悪の判断を鈍らせる新聞記者にも、デイアンドナイトにも通ずる見応えのある映画でした。

まず物語はヤクザという世界において、20年間という移り変わりと家族を題材にしたお話で言葉の巧みさを感じました。例えばですが、対になるような言葉の使い方や因果応報のように過去の言葉と未来の言葉重なってくる使い方はセリフが少ない分、印象的な言葉多かったと思います。

そして独特の映像美と世界観が本当によかったです。個人的に感じるところですが、横なのか縦なのかわからないようなカットであったり、過去作でもある藤井監督ならではの独特な写し方は「見方によって変わる」という視点をいつも届けてくれます。上記に書いた言葉と映像が積み重なることでその世界観に魅了されます。

ぜひ、この世界を映画館で体験して欲しいです。最後にもしかしたらネタバレかもしれないお話を下記に書くので、まだ映画をご覧になっていない方はここで終えてください。


2021年公開作品  5作目







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上記の感想もそうですが、ここからもあくまで個人的に感じたことです。
久々に思ったことがあったので追記します。

率直にシェイプオブウォーターのような世界だと思いました。ジャガモンド斎藤さんがシェイプオブウォーターの感想で「最初と最後がループすることで彼女たちの永遠の物語」を演出しているという話を思い出しました。シネマンションの初めてのベスト5を話している動画にあるので、見てもらえるとわかると思います。

ヤクザという僕が知らない世界で、時代が進もうが賢治の中にある「ヤクザと家族」の形は変わらずにあり、その物語が永遠と刻まれている感じがしました。非人道的な部分もあり、その世界では許されていることもある。一方でその世界とは別の世界では人権がなく、さらには周りの人間も巻き込んでいき、人としても認めてもらえない。ただ彼が一生懸命に生きた「ヤクザと家族」という20年を通して何を感じるのかを問われたような作品でした。

許されないこともある、許すことが大事なこともある。その境界線は簡単には分けれない。物事によって、人間関係によってもまるで違います。その時、ちゃんと向き合って決めたいし、向き合うことで人として成長したいと思いました。
竹野康治郎

竹野康治郎