ぴのした

ヤクザと家族 The Familyのぴのしたのレビュー・感想・評価

ヤクザと家族 The Family(2021年製作の映画)
3.9
評判通り面白かった。「家族の絆なんて謳っちゃって…犯罪者のヤクザを美化するなよ…」と思って見たが、白黒どっちにも振り切らない描き方がうまくて情緒を乱された。

前半で暴力的かつ高圧的なヤクザの嫌な部分をしっかり描きながら、全編を通して「行き場のない者の寄せ集めで、人権もまともにない集団」というヤクザと元組員の社会的弱者の側面を懸命に掬おうとする。

もちろん、法改正による暴力団の締め付けは必要なことだ。ヤクザのいざこざで一般人が殺されてる事件も実際あるし、5年ルールがなければ法律は形骸化する。「お前らがこれまでしてきたことに対する当然の報い」という警察の言い分も最もだ。

だが、後半の主人公ら元組員とその家族の顛末を見ると、この現状を正しいと言い切る自信がなくなる。裏社会の締め付けは別の犯罪集団を生むだけで、組員をやめさせる構造はあれど、元組員の社会復帰を促すシステムもない。

この映画は、法律が悪いともヤクザが悪いとも言い切らず、終始白黒つかないグレーのグラデーションを突きつける。このモヤモヤを見た人に残すことが、この映画の1番の意義なのかもしれない。

そんな中で、ヤクザ映画のお家芸というか、伝統的なカッコ良さもしっかり出していたのが良かった。最初の舘ひろしの風格は存在感があったし、冒頭20分の親子盃のオープニングも痺れた。ただカッコいいのも前半だけで、過度でないのが好感が持てる。

全体を通して分かりやすかったが、「時代が変わった」って何回セリフで説明すんねん。時代が変わったのを演出で見せるのが映画だろうに(というか映像だけで十分わかる演出なのに)セリフで説明しすぎな気がした。最近の視聴者の嗜好を意識したつくりなのだろうか。