モーリス・ピアラという監督の作品で、『開いた口』と一緒に観てきました。
フランスのランスという田舎町に生まれ育った少年少女たちの、出口の見えない青春群像劇。
全体のストーリーはそんなに濃くなくて、細かいエピソードをざくざく刻んでくタイプ。序盤はちょっとキャラクターの区別が混乱しましたがわりとガッチリ撮られた映画という感触でした。
フランスには「バカロレア」という共通試験制度があって、これに合格することで高校卒業レベルの学力保有者と見倣され、国内のどこの大学でも自由に進学する権利が得られるそうです。
(ほんとは三種類に分かれてるんだけど大雑把に言うとそんな感じ。それと進学した先の大学がその人のレベルに合ってるかどうかはまた別の話で、卒業できない人もいっぱいいるそうです……。自分は読んでないけどサガンの『悲しみよこんにちは』で有名?)
この作品は、高校のカリキュラムは全部終わったけどバカロレア(=次なる進学)に向けての勉強は半ば放棄してしまい、さりとて別の進路が明確に決まってるわけでもない子たちの、ウダウダ倦怠青春模様を描いているところが一番の特徴という気がしました。
やることのない田舎なので、相手をとっかえひっかえの恋愛&セックス、街に一軒のバーに吹き溜まって酒をかっ食らい、気晴らしに旅行に行ったりもするけど、でもそれで何が進むわけでもないっていうね……。色恋関係はわりと入り乱れてて、付き合ってない男女同士でもやんわりスキンシップ💞を繰り返すのはお国柄なのかなーと思ったけどどうなんでしょう。
ともあれ、みんなそれぞれ時間とともに、就職したり不倫したり結婚したり都会に出たりと三々五々、なし崩し的におのが人生へと踏み出していく……みたいな感じ。
いわゆる「ふるさと」から離れる機会って、日本でも一般的には進学か、または仕事を選んでの就職ぐらいで、それを逸したらズルズルそのまま……っていうのはどこも全然変わりないんだなーという気はしました。
青春モノとしてのこの映画のいいところは、男女の描かれ方の比率がほぼ半々で、どっちにも偏ってないところ。まぁ描かれる出来事の8割ぐらいが恋愛&セックスだからってのもあるんでしょうけど😆、男の子の願望を描けば女の子の悩みも描くっつう群像劇の呼吸はけっこう好きでした。
あとは大人組のさりげない描かれ方もちょっといいです。適当なところで人生の欲望に折り合いをつけた田舎のおじさんおばさんたちはわりと泰然としてるところがある。
結婚式で痴話喧嘩を起こして憤然と出て行く若者カップルと、それには目もくれずに音楽が鳴ったらいっせいに無言で立ち上がってダンスを踊りに行く壮年男女の群れとをちょびっと対比的に描いたシーンが印象的でした。
わりと何度も「人生人生」直接セリフで言っちゃうのはどうかなーと思ったりもしたけど、意味のないバカ騒ぎをえんえん続けてるだけの青春映画は出口が見えなくてええなーと思いました。もともと明確な出口なんかこの世にゃないもんね。
悩める青少年たちを強く勇気づけこそしないけど、どんなルートでもそれぞれ人生、という感じでやんわ~り祝福するような終盤のトーンもちょっと好きでした。それと馬!
ちょびっとだけネタバレコメントを。