◆あらすじ◆
東京湾を航行中のイージス艦「いそかぜ」が乗っ取られる。それは副長の宮津と他国の工作員ヨンファの共謀によるものだった。宮津は政府に対して化学兵器を搭載したミサイルを東京に発射すると宣言し、脅迫する。犯人グループにより乗組員たちが退艦させられるが、先任伍長の仙石は拘束された部下の如月を助け、いそかぜを奪還するために独りで艦に侵入する。
◆感想◆
対空防御に優れた最新鋭の護衛艦が犯人グループにより乗っ取られる中、乗組員である主人公が独りで艦の奪還に挑む姿と、犯人グループの脅迫に対して政府が慌てふためく姿を併せて描いており、ストーリー序盤に誰が犯人なのか分からないスリリングさ、ストーリー中盤以降には政府が奪われた護衛艦の破壊を進める中、主人公が決死の覚悟で艦を奪い返そうとし、刻一刻と時間が奪われていくスリリングさがあって、最後まで興味を削ぐことなく観ることができました。
いそかぜの先任伍長の仙石(真田広之)は人情厚く、部下思いの性格をしており、主人公にはありがちな性格でしたが、銃器を持っていそかぜを守る犯人グループ相手に単騎でいそかぜ奪還に乗り込む無鉄砲さと感情が優先する姿勢は観ていて楽しかったです。
仙石の部下として配属された如月(勝地涼)は人情深い仙石に心を開きながらもどこか後ろ暗い部分があって、やたらと冷静で感情の薄さを感じさせるキャラクターでした。彼の存在が仙石の行動にも影響を及ぼしていて、最後まで目が離せませんでした。
犯人グループとしていそかぜ副艦長の宮津(寺尾聰)と他国工作員のヨンファ(中井貴一)が首謀者としており、宮津の部下のいそかぜ乗組員とヨンファ率いる工作員の間には協力関係にあるものの、銃など武装によって相手を制しようとする工作員のやり方に宮津の部下たちが不満を抱いており、それがストーリーが進むにつれて大きな隔たりとなっていきます。宮津は政府にいそかぜの武力を持って脅迫するのですが、宮津の目的が感情的なものである一方、ヨンファは政治的・武力的なものを目的にしていて、違いを感じました。本作中、この目的について描写が少なく、もう少し深く描いてほしいように感じました。
本作を観ていて良く分からなかったのが、「ダイス」という組織で佐藤浩市演じる男が指揮する組織なのですが、セリフで雑に説明されていて、私の理解力不足もあるのですが本作鑑賞後にネットで調べてやっと分かりました。
ストーリー後半、しおかぜの構造に熟知した仙石が様々な細工を仕掛けて、犯人グループの行動を妨害していきます。仙石が銃を持つ相手に対して感情的に訴えかける姿が多くて、いくらなんでも無茶が過ぎるように感じました。
専守防衛という日本の在り方と先手必勝という現実の結果の狭間で日本はどうあるべきかという大きなテーマと自分の所属護衛艦を守りたいという主人公の小さな目的が上手くかみ合ってなかなか面白い作品になっていました。
鑑賞日:2025年9月8日
鑑賞方法:Amazon Prime Video