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海の上のピアニスト イタリア完全版のERIのレビュー・感想・評価

4.3
海の上のピアニストは通常盤は過去に一度みたことがあって大好きな映画です。(レビュー残してなかったけど)改めてイタリア版が放送されていたのでこちらをみる。

あぁオープニングからとても良いのだよな。「面白い物語があって、きいてくれる人がいる限り人生は悪くない」というモノローグに最初から心がグッと掴まれる。大好きだな、やっぱり。

自由の女神。アメリカ。彼女を見上げて歓喜する人。1900年ごろ、多くの移民たちがアメリカという新しい血を目指して夢を見ていた。


船の中で生まれたばかりのベイビーが置き去りになって、船で働く船員のダニーがベイビーを育てると言う。ダニーの名前をとって、ダニー・ブードマン・T・D・レモン・1900と名付けた。船員たちはなんだかんだでベイビーが気になって仕方なく、見守りながら育てることになる。ダニーは出生届もビザも何もなく船の中で隠れるようにして育つ。

幼少期の1900の可愛さがすごい。いろんなことに好奇心旺盛でおしゃべりも達者。周りには大人ばっかりだから、いろんなことが彼の目に写って、本人はこっそりパイを盗んでるつもりがみんなわかっててパイを盗ませてあげたり、彼専用のカゴのベッドは彼の成長とともにどんどん小さくなっていく。

劣悪な環境で働く育ての親のダニーはある日事故に遭って3日後には亡くなってしまう。1900はまた親を亡くし、一人ぼっちになってしまった。ダニーの葬式の日、聴こえてきたのは音楽だった。1900は8歳だった。

音楽と出会った1900は、船の上の富裕層たちのフロアで大きな大きなグランドピアノを弾いていた。8歳の彼がなぜいきなりピアノが弾けたのかわからないけれど、それは聴く人を癒す豊かな音楽だった。

マックスが船に入った日の夜は波は大荒れし、部屋中から靴が廊下に転がり船に慣れていないマックスはまともに立ってもいられなかった。そんな時に声をかけてきたのが1900だった。船の上で育った1900は大きな揺れに微塵も影響されることなく真っ直ぐ歩いていた、マックスとは対照的に。

そして大きなグランドピアノまで歩き足についている車輪を外すように伝えた。チークダンスをするように1900の音楽と船は揺られ、シャンデリアも一緒に揺れる。(なんて最高なシーンなの)

1900は海の上でしかピアノは弾かない。船がアメリカに到着するとピアノに夢中だった人たちは一目散に船を降りる準備をする。それまで聴いていたピアノのこともまるで忘れたように。一度も船を降りたことのない1900にみんなはなぜ陸に降りようとしないのか?陸には富と名声を掴むことができるのになぜ陸に降り立たない?と問うけれど、1900の考えは決して変わらなかった。

彼の部屋にはこれまで出会ったの時間に撮られた写真が所狭しと飾ってあっる。彼は目に映るものや人を見て全て音楽に変えていった。無限に溢れる彼の音楽で人々は踊り、聴き入った。そんな彼の元にジャズの発明者というジェリーという男が勝負を挑むと船にやってきた。1900は勝負というより新しい音楽に出会えることにワクワクしていたが、相手は本気で迫力満点。ウィスキーをロックで飲み干し、ピアノを譲るように言ってきた。1900はジェリーが置いた火のついたタバコが気になって仕方ない。ジェリーが弾いた後、1900の番がやってきた。1900はまだ本番前でしょ?と言わんばかりにきよしこの夜を弾いた。そして2曲目はジェリーが弾いた全く同じ曲を1900は弾いた。観客たちは呆れるけれど、ジェリーは1回で自分と同じ曲を弾く彼にますます本気になるばかり。そして3曲目、1900はついに本機を出してきた。まるで手が何本もあるみたいな速弾きをして観客たちの身動きを取れなくさせるほどだった。彼の演奏が終わって会場は静まった後、火のついてないタバコが熱を持ったピアノの弦で煙が立つほどだった。会場はスタンディングオベーションで、1900は唯一無二の存在感を見せた。

そんな彼が初めて窓の外に映る女性に恋をした。だけど声をかけることもできなかった。富や名声はいらないから、この録音したレコードを彼女に贈りたかった。何も欲しがらずに生きてきた彼の唯一の欲だった。結局きっかけを掴めずに渡せなかったレコードと彼は失意の底にあった。それでも・・・1900、それはあかん。

彼女が船を降りるとき、1900は勇気を出して彼女に声をかけた。彼女は心を開いて頬にキスをして、5日うちに遊びにきてと伝えたけど、レコードは渡せずに1900の手の中。

ある日、1900は船は降りるといった。理由は「海が見たいから」船の中にいたら海を見ることができない。陸に上がらないと海の声が聞こえないと。
船員たちに見送られ、1900は初めて陸に降りた。

ラストもとてもいいのだよな。戦争があって、時代が変わって、生きるとは何かを考え続けた。仲間達とも離れ離れになって、世界は一変してしまった。大好きなセリフがあって、「鍵盤の数には必ず限りがある。88だ。誰が見てもそういう。だからこそ弾く人間が無限なんだ」ってところめちゃくちゃ好きで、通常盤見た時もずっとこのセリフが残ってて、有限だから自由っていう価値観はわたしの中にずっとある。

マーティンと1900の解体直前の船の中での会話は、すごい泣ける。
ERI

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