ナツキ

あのこは貴族のナツキのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
5.0
ホテルでアフタヌーンティー食べたあとにそのまま近くの映画館行ってこの映画観たの、なかなかな強烈な体験だった。序盤から頭抱えてしまった

まだ2月末だけど今年の映画ベスト5に入りそうです。日本にもこんな作品があるんですね、出会えて良かった。日本のテレビやドラマ、映画での女性の描かれ方・扱われ方が一向に変わらないのが悔しくて悲しくてなるべく距離を置いてたのですが、今作の監督のパンフレットでの言葉。映像の世界にいる女性がああやって宣言してくれてるの本当に胸が熱くなった。

パンフレットのどの記事にも、うんうんその通りだよね、となったんだけど、特に水原希子が使ってた「共存」という言葉がなあ。それだ!となった。
これまでだったら、あれだけバッググラウンドの異なる女性達の物語なら、絶対どこかでぶつかったり、歪みあったりとかしてたのに、
それこそ宇垣アナの「私には私の地獄がある」というかその人にはその人の地獄があるよねという感じで、この映画がそれぞれの人生の生きづらさを認めてくれる気がして。

分断されがちな私たちだけど、ほんとみんなどうにか手を取り合って生きていこうね、という気持ちでいっぱいです。

分かりやすい"悪者"がいなかったのも現実的で良かったね、華子の姑もいろんなこと今まで言われてきたんだろうなあ。

こういう生きづらさから抜け出そうといざ一歩踏み出して行動することって本当に大変で。たぶんそのちょっとしたズレに気づいてはいるけど目を瞑りながらそこで生きていく方がその世界から抜け出すことよりもまだ楽だなと思うし。なのでラストの二人が大きな決断して自分の意思で生きていく姿が逞しすぎてキラッキラしてた、すごいよほんとに。

女性サイドだけじゃなくて、男性サイドの生きづらさも描かれてたのも良かったなあ。自分の意思があるかどうかは別としてそういうもんなんだと名家青木家の男として生きていくのに疲弊していく幸一郎

初めて出会った時に話した映画を見てくれてなかったのとか、トマトは育てるより買った方がいいじゃんとか、花束の麦くん?となったね、、

あの最後のコンサートのとき、幸一郎は何を思ってたんかなあ


内部生と外部生のくだりとかは内部生側としてああ確かに外部生が緊張してるところ、元々の友達といつも通り楽しくああいう校庭とかで外部生どんな人いるんやろうと眺めながら過ごしてたなあとか、私の周りにも華子までではなくても上流階級の育ちなんだろうなあという人もちらほらいたり、許嫁がいた友達とか今どうなってるのかなあとか、色々思い出した。

中学生くらいの頃は別世界に住んでる同級生達を羨ましく思ったり、人生イージーモードなんやろうなあとか勝手に思いこんでて、分かり合えないなあと思ってたの、今となってはすっごく恥ずかしい。断片的なことしか知らないのに勝手に想像して決めつけて。

今までの映画ならそのあたりの階級の違いのギスギス感も描かれそうなのに、サラッと流れる感じがとても好みでした。
なんやろう、ブックスマートは主人公二人も周りのみんなも価値観アップデート済でそこからの話やったけど、この映画は周りは今までの価値観で、それに苦しめられる主要メンバーは最初から連帯してるというか何というか。彼女たちが価値観アップデートしていく過程の話ではなくて、彼女たちはすでにアップデートされてて、そこからどうやって生きていくかの話で。
そういう意味でブックスマートがパンフレットで引き合いに出されてたのすごいわかるし、だからこそ刺さるというか。
自分はアップデート済み!と思ったり慢心したくはないけど、主人公たちの価値観と置かれてる状況の価値観の差が今の私にとってまさに!という感じでリアルで。
 
ブックスマート、レディバード、フランシスハへのアンサーというの本当にそうやね、日本でこんな作品を生み出してくれてありがとうございます!!!

原作読むしパンフレットも大切にする

原作の文庫本買う時に、カバーが映画のポスター版と元々のオリジナル版があって、映画良かったから映画版にしようかなと思いながらオリジナル版の装丁みたらとても素敵で。そちらにしたのですが、あとから大島依提亜デザインだと知って、ああ😭❤️となりました。パンフレットも最高です。あのグレーの中にあるキラキラ。
ナツキ

ナツキ