ハジメ

あのこは貴族のハジメのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.3
地方で生まれ育ち、大学で上京してきた美紀側のぼくにとって、上京してくるまでの東京は憧れの街だった。
なんでもある街だと思っていたしなんでもできる街だと思っていた。

そんな東京にも4年住み、行く度迷子になっていた新宿駅では迷わなくなったし、就活で通った東京駅周辺の高層ビルも見慣れた。
人の多さや街の活気に圧倒されることは少なくなったし、満員電車が当たり前になった。

確かに東京には慣れてきた。
それと同時にかつて思っていた憧れの街はぼくの心からなくなってしまった。

劇中で美紀が言っていた「虚構の街」、まさにそうだと思う。

東京生まれとそれ以外、持てる者と持たざる者。
程度や種類こそ違えど、東京という街は誰も口には出さない様々な格差がある。
外からは見えない。中に入ってみないと分からない格差。

しかし、中に入ったからといって、中の者になれるわけではない。
4年暮らしたが「自分は東京人です。」とは決して言えないし、死ぬまで言えないような気がする。

なんでもあるし、なんでもできる街。だけどそれは「誰でも」ではない、そんな街。


現代において異なる階級を生きる2人を通して、東京という街を見事に描いた傑作でした。
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