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あのこは貴族のooospemのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.0
カップヌードルを大学生になるまで食べたことがなかった。禁止されていたわけではないが、「体に悪いよ」という家庭教育のもと、なんとなく食す機会がなかった。美大にいた当時、単位が危ない生徒らが夏休みに石膏像を作るという落ちこぼれ実習のあいま、仲間と一緒に人生で初めて食べた日清シーフードヌードルの味は、華ちゃんが美紀ちゃんちで食べた棒アイスの味と似ていたのかもしれない。私は貴族でもなんでもないが、東京のど真ん中に住みそこそこカタめな教育を受けたからか華ちゃんの方に感情移入がすごかった。いや、たぶん、観客がどんな出身であれ、東京を知る若者であればなにかしらの共通意識を抱かせる、そんな力をこの映画は持っているんだと思う。若者というだけでマイノリティである私たちが、上の世代やこわばった社会構造に対して静かにくすぶらせている「やってらんねぇ」っていう連帯感を、劇場では体感できた。暴力も、他人への蔑みも、マウントも、いい子であるべきという強迫観念も、やめたほうがいいからしないというより、正直、面倒臭いだけ。だから私たちは平和に一緒にいられるのかもしれない。無関心、無干渉という高度な優しさが東京にはある。それが心地いい。「いい人でありたい」より、ただ「自由でありたい」という等しく平等な自由願望だけは、この不平等だらけの世界でもあるのかもしれないと思う。それでもなお、「この世界はああいう層を中心に回ってる」。く○○らえ!むずかしいのは、結婚=正解という認識も、女だから料理するという常識も無くなってしまえという気持ちはありつつも、ふすまの開け閉めのお作法とか料亭でのマナーとか、そういう文化は心理的に害じゃないってこと。規律と自由のバランスってむずかしい。そんなことより希子ちゃんの顔面が強すぎて富山のシーンが全然馴染まない。
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