えいむ

あのこは貴族のえいむのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.7
『ここは退屈迎えに来て』の山内マリコさん原作の映画。

見てみたいと思っていたことが描かれていました。それこそ、階層が違うと接点が持てなくて見えない世界なので。とても興味深い映画でした。

同じ東京で暮らしながら、別世界に生きる別階層の人。
私は東京暮らしですがこの映画には出てこない階層で、存在しないものとしてバッサリ切られてました。あぁそうか登場人物の彼らにとっては私もまた別階層の人間だからか、と思いました。

幼稚舎上がり、内部生、外部生、上京組、アフタヌーンティー、お雛様、医者の家系、出馬、議員秘書、興信所……気になるワード、覗いてみたかった光景の目白押し。


私が一番グッときたのは、門脇麦さん演じる華子が、水原希子さん演じる美紀の部屋に入れてもらえた場面。
華子が、落ち着く、と。理由は、ここにあるのは美紀さんのものだから、と。
そしてマグカップの話には特にグッときました。
美紀が、これダサいんだけど全然気に入ってもないんだけどけっこう手に馴染んで、こういう食器にかぎって頑丈で割れずに生き残ることってない?と。
あるある!な話なんですが、
まっっったく共感できない華子。
思い当たることが全然無いので、戸惑いながら苦笑いをするしかない。華子の家にはそんな食器は無いんですね。
階層の違いで、あるあるネタは通じない。響かない。共感し合うことがうまくできない。

そんな2人が一緒にベランダに出て、建物の隙間から東京タワーが見えた場面で、うわ…と思って涙が出てきました。
アフタヌーンティーの場面の景色は東京タワーじゃなかった。ここでこそ満を持しての東京タワー。
ベランダに出たついでに植物に水をあげる美紀。いつもの習慣でやってる感じで特に説明もないのがとてもいい。そして華子は人生を変える。


門脇麦さん。『愛の渦』『さよならくちびる』などで観てきた役柄とは全く違う、東京生まれ箱入り娘の華子役で、驚きました。流石の演技力。
良家の幸一郎の家族に結婚の挨拶をする時の、畳の部屋に入る所作も見どころの一つ。
門脇さん自身はニューヨーク生まれ東京育ちなのですね。
後ろ姿のシーン、歩く時に左肩が下がる癖が華子役としては気になったので、華子の時だけ姿勢を矯正しても良かったのかも。(他の役の時は味になってたりしますね。)
安い大衆居酒屋に場違いな服装で初めて来て面食らう様子も可愛かったです。

高良健吾さん。『蛇にピアス』の時とはそれこそ別世界に生きる、良家のハンサム弁護士の幸一郎役をとてもよく演じられて素晴らしかったです。
お庭の池に石を投げ入れながら喋る場面とか、仕事から帰ってきて華子が育てようとしてるベランダの鉢植えの土を一人で嬉しそうに触っていたあと、トマトを育ててみたいという華子に「買った方が早くない?」と言う場面などとても良かったです。

水原希子さん。『ノルウェイの森』の緑役のお人形のような魅力とはまた全然違っていて、それと演技が上手くなっていて見ていて気持ちよさがありました。東京の街を自転車でガシガシ走る美紀を演じる姿に人間っぽさがあり、素敵でした。
地方生まれで大学入学で上京して、地味→派手(キャバ嬢)→洗練、と色々乗り越えて都会的に垢抜けていく美紀のファッションの変化も興味深かったです。
この映画は、階層の違いによる服装の違いもカタログのように見れて面白いです。


他のキャストの方々もみなさん素晴らしかったです。
石橋静河さんの演じた友人役も、石橋静河さんのあの芯のある魅力がないとかなり変な感じの人物・空気になるかもなぁと思いました。
石橋静河さんは、いつもスン…とその場にその役として存在してますが、けっこう石橋さんの魅力による力技で帳尻合わせるような感じに毎度驚きます。