さいごん

あのこは貴族のさいごんのレビュー・感想・評価

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.5
この映画で扱われる人物や関係性というのは放っておけば観客が勝手にストレオタイプなものに当てはめてしまいそうなものなんだけど、本当にちょっとした言い回しとか仕草とか演出一つでそれを易々と回避しているところが個人的に1番好き。

また、女性の話という所でもちろん女性特有の問題もあるんだけど、女性同士の対立でも男性や世間との対立を描くわけでもない。
でもそこにはちゃんと相入れなさも残しつつというバランスが凄く良い。
あと全然俺の話でもあって、性別云々じゃない普遍的な話の部分も多い。

華子と美紀は住む世界は違うんだけど対立でも仲良しこよしでもなく、直近で言うと「アルプススタンドのはしの方」の吹奏楽部の部長に...の場面を思い出すようなシーンのあの関係性。
最近こういうのを丁寧にやられちゃうのが1番涙腺にくる。

また、それぞれの同じ世界の友達についても親友と呼ぶには危うい微妙なバランスで成り立っている。
というかこの映画の中のもののほとんどが「○○だけど○○」という風に多面的な側面を持っていて、それを最初に書いたちょっとした演出で表現しているところが本当に手際がいい。
それでも直球の素晴らしいシーンもあったりして、特に自転車の2人乗りのシーンはキッズリターンに並ぶくらいの名シーンですね。
(余談だけど自転車の2人乗りというのは同じ方向に進むという表現に適していて、異性よりも同性の2人乗りのシーンの方が好き)

恥ずかしながらこの映画で初めて知った監督さんですが、この作品数で考えると驚くほど確かな演出力だと思うのでこの先の作品はリアルタイムでチェックしなければいけないなと思わせてくれました。いやはや凄い人ってのはまだまだいるものですね。