土萠めざめ

あのこは貴族の土萠めざめのネタバレレビュー・内容・結末

あのこは貴族(2021年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

思っていたよりも貴族の話だった。冒頭の正月の会食のシーンの会話や婚約して挨拶に行く時のシーンの襖のあけ方から始まる完璧な礼儀作法、あんな人たち本当にいるの?と思ってしまうのは私が庶民だからなのかもな……
貴族対庶民の対比の話なのかと思いきや、話が進んでいくにつれて、自分の生まれた世界の価値観を受け入れて(何の疑問も持たず)生きる人たち(貴族であっても庶民であっても)と自分の生まれた世界の常識を飛び出していく人たち(貧乏な家に生まれても私立大学に進学し、学費が払えず退学してもなお東京で自力で生きていこうとする美紀や、貴族の生まれであっても結婚を唯一の幸せだとは思わずバイオリン一筋で生きていこうとする華子の友人……)の対比の話なのかなと気づいた。華子は初め自分の住んでいる世界が狭いことにすら気づかない感じだったけれど、美紀たちと交流することで自分にとっての本当の幸せは何なのかに気づいていく。
貴族でも庶民でも、自分のいる世界から抜け出せない辛さを抱えている点では同じ、というのはハッとさせられた。
「事情は分からないけど…何処で生まれたって、最高って日もあれば、泣きたくなる日もあるよ。でも、その日何があったか、話せるひとがいるだけで、とりあえずは十分じゃない?旦那さんでも、友だちでも。そういうひとって、案外出逢えないから。」いいセリフ。
それにしても突然離婚の話が出て、華子の元夫は華子の気持ちを理解することがちゃんとできたんだろうか……そのあたりがモヤモヤするけど、エンディングのバイオリンの音色が美しくて観た後は切なくなった。