Tutu

イングリッシュ・ペイシェントのTutuのレビュー・感想・評価

3.9
砂漠の戦場で撃墜された飛行機から、顔に酷い火傷を負った男が収容された。顔と一緒に記憶をも失った彼は「イギリス人の患者」として看護師ハナの手厚い看護を受ける中で、自身の道ならぬ恋について回想する。

戦争という人間の業、そして不倫という男女の業、これらに翻弄され、風に吹かれる砂粒のように霧散していく人の命のオンパレード。不条理である。戦争はいとも簡単に人の命を奪うが、負けず劣らず不倫だって、人に自らの命を絶つ衝動を植え付けるくらいには不条理である。
最初のうちは、外在的でマクロ的な戦争という不条理に、内在的でミクロ的な不倫という不条理をミックスすることで彩られる悲恋、という見方をしていたものの、観進めていくうちに、実際のところ、この映画においては戦争と不倫は等しく不条理なものとして語られているんだろうか、とだんだん考えを変えさせられてきて、そこが面白い。不倫ってのは凄いパワーがあるのね。

不条理を善悪に置き換えない、というのは僕が芸術作品に触れる時に大事にしている考えであって、この作品もそれを遺憾なく発揮しておかないと、途端に色々と難しい作品になってしまう気がする。美化できる恋愛だけが素晴らしいとは誰も断言できないと思うのですよ。