海老

最高の人生の見つけ方の海老のレビュー・感想・評価

最高の人生の見つけ方(2007年製作の映画)
4.2
大好きな作品なんです。
大好きであるゆえに、この邦題は気に入らなかったです。「独断偏見・原題のままが良かったランキング」10位に入ります。

その原題は「Bucket list」
意訳は棺桶リスト。あちらの風習で、死ぬ前にやりたいことをリストに書き出し、実践していくのだそう。

余命半年を言い渡されたカーターとエドワード。境遇も性格も全く違う二人が、たまたま病室が同じだったという縁から、バケットリストを握り、残された短い時間を謳歌する話です。

無理にエドワードが書き足した内容がどれもこれも無茶な内容で、高級車の運転やらライオン狩りやら、果ては世界一の美女にキスとか…。資金力だけは異常なエドワードのはからいで、自家用ジェットで世界を旅するのが前半のくだり。最初は乗り気じゃなかったカーターが次第に心から楽しみ始める様子は爽快で、名車を惜しげもなくぶつけ合いながらケラケラ笑う姿は、なんだか可愛らしい。モーガンフリーマンにジャックニコルソンなのに。可愛い。

この路線でいっちゃうと、所詮は金持ちにだけできる贅沢止まり。だったのですが、豪遊だけでは終わらないのが、この映画の一番好きなところです。むしろ、経済力にモノを言わせた前半パートは後半の核心への布石に感じます。

金はないが家族を大事にしてきたカーターと、金はあるが不器用で家族と疎遠なエドワード。
この二人の対比的なシーンでは、エドワードがとても悲しく、孤独の悲壮感を見ていられなくなります。金さえあれば幸せというわけではないとはよく言われますが、前半の楽しそうな出来事の反動もあり、観ていて本当に辛い。

そこから、ある転換を迎え、エドワードが一人でリストを完遂することになってからが、真のバケットリストだったのだろうと思います。
金で解決するのでなく、人間として大切なことを達成していく。中でも、「世界一の美女にキスをする」の達成は本当に好き。そう回収するのか…という驚きとともに、暖かい涙がこぼれました。

最高の人生の見つけ方を指南するストーリーではありませんが(まだ言ってる)、とても心が温まり、残された時間について考えさせられる、とても良い話です。

贅沢はたしかに楽しい。いくらかは幸せになれるかもしれない。けど本当に後悔のない最期を迎えるためには、何をやり残しているか、何を伝え忘れているか、そんなことを考えさせられる話でした。

観たあとに、すごく長い溜息が出た。
心地よかった。
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