Jeffrey

青春の殺人者のJeffreyのレビュー・感想・評価

青春の殺人者(1976年製作の映画)
4.0
「青春の殺人者」
冒頭、店前で楽しく踊る恋人ら。俺はこれからクソ親父に会いに行くんだよ…傘を差し歩きゴダイゴの音楽が流れタイトルロゴが出現。雨、電車、回想、車を盗みバレる、西瓜、包丁、血…本作は今村昌平製作で長谷川和彦の初監督でATG作品は七四年に千葉で実際に起きた親殺し事件を基に描‬いた題名の通り青春真っ只中に殺人を犯した青年と恋人を映した映画で秀作。この映画は次の瞬間にいきなり大事になる描写で始まり観客は一瞬にして驚く…そこへ母が登場し殺人を家族内問題と認識し始め、一種の共謀的な展開になる。冒頭から数分で母親の強烈な恋人への嫉妬心が伝わる。息子は自分の父親‬を侮蔑し粗末に扱い死体を破棄する。母は狂ったかの様に思い出に浸り謝り悲しむ。そしてカメラが一回転し親子の戦いが描写される。いや〜初見した時は何ちゅ映画だと思った。特に母殺しのシーンは強烈だ。物語は市原両親殺害事件をベースに経営してるスナックから実家に戻った青年が話の縺れ、弾みで父‬を刺殺す、続いて母を。因みにだがその息子は今現在も収監されている。またATGの「もう頰づえはつかない」で迫真の演技をした桃井かおりが本作に軽く出演している。当時なぜ挿入歌が英語だらけの音楽なのか不思議に思ったが過程を見ると成る程と理解した。でも雰囲気に何故か合う。当時十七歳の原田美‬枝子のヌードシーン、白ブリーフを穿き原田の乳を吸う水谷 豊の画は脳裏に焼きつく…夜な夜なバスタブから両親の死体を掬い布に包み放棄する迄の下りは中々見応えある。また浜辺で幼い時の思い出を回想する場面は感動的だ。また主演二人よりも今年の一月に亡くなられた市原悦子の母役は超強烈で凄絶。‬そして製作費二千万映画で店丸ごと燃やす勇気…お陰でキネマ旬報一位を獲得。にしても今平の人間蒸発から始まり芸術性を高めた日本アートシアターギルドの中では枠にハマってない様に感じる作品だがオールロケを駆使した感覚があって好きだ。画期的な事は二度の殺人を犯し、異常性が無い点が興味深い。‬本作は何が凄いってATGらしさが全く無く青春色がほぼ無い作風で千葉で実際に起きた親殺しをテーマに長谷川和彦監督が残酷且つ悲劇的な描写と暴力、様々な視点で描いた70年代の傑作。終始迫力がある映像、特に炎上シーンは脳裏に焼き付く、こんな映画は二度と作れない傑作映画。
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