たく

青春の殺人者のたくのレビュー・感想・評価

青春の殺人者(1976年製作の映画)
3.7
実際の事件を基にした短編小説が原作になってて、心に渦巻くどろどろした情念にどうしようもなく囚われた青年を水谷豊が好演してた。
開始10分くらいで衝撃的な展開になって、ここでの母親とのありえない奇妙な会話がかえってリアルな怖さを感じさせた。そしてだんだん母親としての狂気を見せていくところが気持ち悪さ満点の迫力で、場面の収束までしつこくねちっこく撮っていく。

順にとって両親は権力と呪縛の象徴みたいなもので、高校時代の自作映画で大人を敵として描くところに重ねられる。そこから逃れるように順が衝動的な行動を起こしちゃうんだけど、原因となったケイ子がやっぱり彼を呪縛してるというどうしようもなく逃れられない状況にもがき苦しむ構図。終盤で何もかも終わりにしようとするんだけどやっぱりダメで、魂の抜け殻みたくあてどもなく彷徨っていくという、なんともやりきれない話。

母親を演じた市原悦子がすごくて、息子を溺愛する母親独特の気持ち悪さをムンムン漂わせてた。若き原田美枝子がこの時代らしい露出しまくりの大胆演技。桃井かおり、菅原文太がチョイ役で出てて驚いた。
心地よく響くゴダイゴのミスマッチ感がなかなか良い。
長谷川和彦はこの3年後に「太陽を盗んだ男」を監督するんだね。
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