イトウモ

ホテルニュームーンのイトウモのレビュー・感想・評価

ホテルニュームーン(2019年製作の映画)
4.0
筒井武文の新作!!

イランで二人暮らしする母娘
手術に受けるのを渋る母親を娘が「麻酔が効いてなんでも喋っちゃうのが怖いの?」と茶化す。この家族には父親がいないが、突然日本からやってきた母親の古い知り合いらしき男性が、母親の秘密を握っているようで娘はそれをたどる…

もしかしてこの日本人が不在の父親かと、客の興味をミスリードするもののなんだか拍子抜けする展開で、つかみどころのないプロットのまま話が終わる。ただむしろ「本当の父親」に興味があるのは観客の方で、当事者ではなく、この映画は「秘密を娘に話した母親がやっと麻酔を打たれる」ことにあるかと思うと好感を持った。

回りくどい話だが、この回りくどさが執拗に人を移動させ、これでもかという動線映画だ。
狭い部屋の中で、窓の外を覗く母の目に外で遊ぶ子どもたちがミニチュアのように写り、この小さな人間から壁に飾られた皿、壁とモンタージュして小さな部屋がいかにして彩られ、どの彩が母娘を外に誘うかかけひきしている。

父親のいない母娘、妻のいない日本人の男、子どものいない夫婦、と不在が家に人を招いたり、家から人を連れ出すきっかけを作り、
最初の部屋から部屋へしか移動しない母娘のシーンが、
終盤の街を彷徨う娘のカットと対比になっている。
家で娘と母親、家に帰れない二人が出会うのがホテルというのも粋だ。
帰れないホテル暮らしの娘の恍惚とした視線がまた色っぽい

エレベーターで男女が向き合うのを装飾の金属で鏡写しにするシーン、
二台の車がホテルに乗り付けて、彷徨った4人が集合するシーン、
ラストでホテルで出会った母娘が顔を合わせないままベッドに彫像のように並ぶシーン
なんてゴージャスなんだ