KnightsofOdessa

Vaurien(原題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

Vaurien(原題)(2020年製作の映画)
2.0
[女性を付け狙う男の放浪] 40点

カンヌ・レーベル選出作品。Peter Dourountzisによる長編デビュー作。電車内で大声で電話する女性の向かいの席に座り、電話中なのに話しかけ、無断で写真を撮り始める男ジェ。無賃乗車中の彼は、女性に同乗者を装うよう畳み掛けるが失敗する。駅のホームではスマホをいじる女性に近付き、荷物を人質に電話をかけたいと申し出て、束の間の交流を行う。このように、ジェという男は、一人で行動する若い女性を付け狙い、優男的な風貌を存分に活かして、他人の空間にある隙間にスルッと入り込み、自らの欲望を叶えていく。狙った獲物に対する執拗さと危なくなったらすぐ逃げる決断力によって、犯罪行為すらバレることなく破滅的な生活が続いていく。女性ばかり追い回してパリの街をフラフラしている感じはアントニオ・カンポス『サイモン・キラー』にも似ているが、約半数の女性陣が陥落していくジェの魅力が全く表現できていないので、ずっと退屈なのは辛いところ。女性たちを物色する中での暴力的な視線/行動は、物語の中でも注意を促す看板が映されるなど、意識的に扱われているが、"ジェに協力的でない女もいるんだぜ"みたいな対比として置かれている感の方が強い。出来損ないの『勝手にしやがれ』みたいなラストまで、終始微妙な印象を残す。

オフェリー・バウ演じるマヤは大学で哲学を専攻していた経歴の持ち主であり、そんなエリートですら万引きと物乞いの生活をしていることが示唆されている。
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