KnightsofOdessa

七人樂隊のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

七人樂隊(2021年製作の映画)
3.5
[それでも香港は我らのものであり続ける] 70点

サボー・イシュトヴァーンやシャーンドル・パール、タル・ベーラみたいな現代ハンガリー映画界のレジェンドたちが同じような企画をやったら狂喜乱舞しながら魅力の全てを解説する記事を書きまくるんだろうと思うので、本作品のあまり響かなかった点について知識のない私がとやかく言える立場にないことはよく理解している。7人のオムニバスなので一人15分くらいなのだが、人によって体感時間がぜんぜん違うのが非常に面白い(多少実際の時間も増減しているかもしれんが)。基本的に全ての短編で香港の過去と近過去を描いており、そのノスタルジックな情景と画面外にある現在の香港の地獄を比べてしまって暗い気持ちになってしまう。サモ・ハンが子供時代の訓練風景を描いた第一話"稽古"、アン・ホイが1961年の小学校校長と英語教師の関係性と40年後の同窓会を描いた第二話"校長先生"、ユエン・ウーピンが1997年の香港に残ったカンフー好きおじいちゃんとカナダへ渡った孫娘との交流を描いた第四話"回帰"は、年代順に描いていることもあって特にそういったノスタルジーが強い。明白に現在に一番近い過去が登場するリンゴ・ラム(これが遺作…)の第六話"道に迷う"では、変わり果てた香港を思いながらもその変容を受け入れる様が、子供の成長を受け入れる父親の目線を通して描かれていたのが印象的だった。この父親が亡くなるという流れは、監督の意図したところなのか不明だが、あまりにも現実とリンクしすぎてて、彼を知らない私ですら悲しくなった。

ちなみにベストは、パソコン黎明期/SARS流行期(奇しくもコロナとの繋がり)/本土連絡鉄道バブルの三つに時代を背景に、発展していく食堂であぶく銭を掴もうと躍起になる三人の男女を描いたジョニー・トーの第五話"ぼろ儲け"。女優が寺田蘭世に似てるから、というだけでなく、会話の内容以外にも食堂の客層や三人の服装、太った男の扱う商品などが変化していく細やかさに加え、ノスタルジックなベタつきがなく爽やかなコミカルさがあって非常に良かった。

最後のツイ・ハークのやつはマジで意味が分からん。
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