緑青

七人樂隊の緑青のレビュー・感想・評価

七人樂隊(2021年製作の映画)
4.1
香港映画界はどうしてこう、ものすごく良い意味で、同人誌を作る時のような自由さと軽やかさで見事な映画を作れるのだろう。
もう本当に笑っちゃうくらいそれぞれのカラーが出ていて、オムニバスってこういう楽しさがあるよな!と大変楽しんだのですが、香港という土地に通底する「事物に永遠などない すべては常に流転しゆく」というあの感覚だけは全作品に共有されていて、それはとても感慨深かった。
前知識無しで観たのでずっと「さぁ次はどの監督のどんなお話だ?!」とワクワクしていた。私はホントにジョニー・トー監督が好きなんだけど、「これ好きだなぁ」と思った短編がトー作品でグッと来た、自分の感性の信頼度が上がると嬉しい。リンゴ・ラム監督作品もやっぱり良かった。彼に永遠の賛辞を。ユエン・ウーピン監督もめちゃ良くて「えーもっと観よう!」と心に決めた。恥ずかしながら初めて拝見したアン・ホイ監督の作品、シビアな現実への冷静な視線と、人間に対する深い優しさが沁みる、好き。パトリック・タム監督、どことなくスムーズでない独特のカットつなぎが、記憶の一部を再生したような印象を醸していた。そしてサモ・ハン監督とツイ・ハーク監督、それぞれの作品がこの映画の箍として機能していたように思った。サモ・ハン監督作品は短編として秀逸すぎる。ツイ・ハーク監督、私はあなたの大胆で確かな感覚を本当に尊敬している。本当に素晴らしかった。
映画を最後まで観れば、この作品がどのような経緯でどのようなコンセプトで撮られたのか、作品外の情報に当たらなくても分かるのが、作品に対して真剣だし、観客に対して誠実だと思った。
香港という都市の輝きが、いきいきと鮮やかに焼き付けられた映画がたくさんこの世に残っていることは、かの都市にとって考えうる限りの最たる誉れであろうと思います。
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