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アンモナイトの目覚めのtakのレビュー・感想・評価

アンモナイトの目覚め(2020年製作の映画)
3.5
19世紀のイギリス。古生物学者のメアリーは、海辺の町ライムで観光客用に化石を販売する店を営み、老いた母と二人で暮らしていた。裕福な化石収集家から妻シャーロットを静養させたいので数週間預かって欲しいと頼まれる。ただでさえ人嫌いのメアリーだが、高額な報酬にしぶしぶシャーロットを受け入れる。最初は突き放す態度をとるメアリーだが、高熱を出したシャーロットを介抱してから距離が縮まっていく。

ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナンの共演で注目される作品。同時期に似たテーマとストーリーであるフランス映画「燃ゆる女の肖像」があるがために、どうしても比較されてしまう。しかし登場人物を絞り込んで映画への没入感を突き詰めた「燃ゆる…」とは違って、メアリーとシャーロットの周りには多くの人がいる。それが二人を見る他者の視点を感じさせたり、上流階級の会話にすぐに馴染むシャーロットを描くことでメアリーの心情を際立たせたり、「燃ゆる…」とは違ったスリルがそこにある。視線を交わさないラストと、真正面から視線を交わすラスト。「燃ゆる…」は切なさで胸がいっぱいになるけれど、決定的なお互いのすれ違いを見せつけるだけに「アンモナイト…」は辛い映画。

ケイト・ウィンスレットは映画スター然としない役柄がほんとに上手い。「愛を読むひと」でも「女と男の観覧車」でも、絞り込んでない体型や身体がすごく役柄に"らしさ"を与えているし、逆に「タイタニック」のローズ役は上流階級だったから、かなり身体を絞って演じたんだろう。この作品でもさらに役柄を広げたと感じる。一方、シアーシャ・ローナンの笑顔が見たくて主演作をセレクトするファンには、前半の陰鬱とした感じはちょっと痛々しい。その分、二人が大きな化石発見をする場面以降の生き生きとした表情が素敵だ。
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