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運命の回り道/リンボーのsonozyのレビュー・感想・評価

運命の回り道/リンボー(2020年製作の映画)
4.5
荒涼としたスコットランドの離島。
シリア等からの難民が、いつくるのかも分からない亡命申請の認可通知を待ちながら、与えられた最低限の生活環境で暮らしている。

家族と共にシリアからトルコに逃れた後、一人イギリスに亡命しようとやってきた主役のオマール。
既に32ヶ月以上待機中の、フレディ・マーキュリーを崇拝するアフガニスタン出身のヒゲ男ファルハド、兄弟を偽装しているアベディ(ガーナ出身)とワセフ(ナイジェリア出身)らと共に暮らし始める。

村に一つだけある電話ボックスで、故郷に電話する彼ら。
オマールは母に電話し、料理のレシピを聞いたりしているが、シリアで戦っている兄ナビルとの確執が見えてくる。

オマールはシリアでは祖父・父と同様、ウード(リュートに似た弦楽器)の演奏者として活躍していたようで、当地でもケースに入れた祖父譲りのウードを常に持ち歩いているが、弾くような気持ちにはなれない。

ヘルガ(女性)とボリス(男性)による亡命後の生活準備のための講義を受けるメンバーたち。
セクハラ講座や、仕事の面接のやり取り練習など。

一向に来る気配のない郵便を待つ4人の表情・・
特にファルハドのキャラが面白いですが、全編に流れる、エリア・スレイマンの作品に似た可笑しみ・空気感、好きです。

亡命認可を得たとしても、その後、どうなるのか、どうしたいのか…複雑な彼らの心情。

感情を抑え込んだような静かな男オマールの故郷、家族、兄、ウードへの複雑な感情が後半に向けて沁みます。

“Limbo”を調べると
中間状態・どっちつかずの状態/忘却のかなた/拘置状態/天国と地獄の中間の場所
といった意味がある単語ですね。

英国インディペンデント映画賞: ブレイクスルー・プロデューサー賞(Irune Gurtubai)
マカオ国際映画祭: 最優秀作品賞
サン・セバスティアン国際映画祭: Youth Jury Award
カイロ国際映画祭: Golden Pyramid Best Film, FIPRESCI Prize Best FIlm

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