霜月

Summer of 85の霜月のレビュー・感想・評価

Summer of 85(2020年製作の映画)
4.5
人として生きて知る痛みの、曖昧で深い部分を丁寧に描いている作品でした。青春の煌めきを感じさせる海の鮮やかな青と愛に翻弄される少年の心情が時に同調していて、時に対照的で。夏という爽やかな季節の残酷さを感じました。

冒頭から“死”に対しての独白があるように、ずっとどこか、不安げで危うい空気感が漂っていました。現在に至るまでの回想は、少年の言葉でぽつりぽつりと語られるので、小説を読んでいるような不思議な感覚でした。

“あなたは知らなくていい”と少年は画面越しに我々を見た。他人の介入を良しとしない、ふたりだけの夏。本当にそうだ。知らなくていい。理解されなくていい。愛に溺れるとはきっとそういうことなのだ。澄んだ瞳の奥に感じた退廃的な美しさは、若さ故のものだ。そしてその破壊的な衝動は、狂気じみた誓いをも果たしてしまう。愛に窒息できたらいいのに。

“どちらかが先に死んだら
残された方は、墓の上で踊るんだ。”

全編フィルム撮影だということで、
映像の質感が心地よく。
80年代特有の色合いや音楽も素敵でした。