『君の名前で僕を呼んで』的なラブストーリーをイメージしていたが、恋愛よりも、死への向き合い方が主題に思えました。
主人公は冒頭から死に興味を持っているという発言をしているし、原作は『墓のうえで踊れ』というタイトルの小説ですしね。
フランソワ・オゾン監督、『僕を葬る』という死に向き合う作品を昔も撮ってたなぁ、なんてことも、観ながら思い出していました。
実際のところ、同性愛者の恋愛映画として見ると、10代の少年が初めて同性に惹かれる衝動のようなものの描写が、ちょっと弱いかな。
80年代の夏の日々、シャツを脱ぎ捨てて上裸で船に乗る青年2人の姿は、すごく絵になるのは確かですけどね。
でも、そんな状況に2人でいたら絶対に惹かれ合っちゃう、という説得力を見出すまでには至らなかった印象なんです。
前述の『君の名前で僕を呼んで』や『ブロークバック・マウンテン』を思い出すと、特にそう感じてしまいました。
ただ、恋愛モノとして深めていくよりは、恋愛を通して死と向き合うことに重きを置いているので、その要素が深まってくる終盤の方が展開としては面白い。
人間が生きている間に、向き合わなければいけない死は必ずある。
向き合って、越えていかなければならないのだけど、それに対するこの映画でのアプローチについては、結局ちょっとコメディっぽくはなっちゃいましたけどね(笑)
劇中歌としてメインで流れるロッド・スチュワートの「Sailing」も、良い雰囲気が売りのフランス映画の選曲として、なんだか陳腐に思えてしまいました。