久しぶりに観たトマス・ヴィンターベア作品だったけど、これまでにないコメディックな側面も見せつつ、彼らしい洞察力に満ちた人間ドラマになってて、マッツ・ミケルセンの激渋さも合間って凄く味わい深くて面白かった。クラシックな悲喜劇のようなストーリーだけどかなり普遍的で、国や世代を越えて伝わる間口の広い作品だと思う。ラストシーンのカタルシスはすごい。
アルコールに対する薄っぺらな弾劾もしないし、かといってその害悪をうやむやにする訳でもない。フォーカスするのはアルコールを通したミッドライフ・クライシスや自己肯定、他人とのコミュニケーション。
アルコールをはじめどんなドラッグも、それぞれの依存性や身体へのダメージの度合いに差はあれど、結局はそれを摂取する人間のさじ加減で毒にも薬にもなる。主人公の飲むウォッカと、日本人の飲む抗うつ剤と、本質的な違いはなんにもないんだよな。