【What a life】
仕事にやり甲斐を見出せなくなった中年の高校教師4人が、実験として血中アルコール濃度を常に0.05%に保っておけば、仕事も私生活も上手くいく仮説を立て、授業中にも関わらず飲酒をする…というお話。
この作品は正直言ってズルい!
映画的には至って平凡であり、中年男性たちが酒に溺れていく様子を見せ、そのせいで仕事も家庭も崩れていくという分かりきっているオチを見せながらも、ラストは文句なしのベストシーンを用意しているので、大変評価し難い。
マッツ狂ではない自分もあのラストでマッツの事が好きになった。主題歌『What a life』の曲にのせ、酒を片手に持ちながら華麗でパワフルなダンスは必見。まるで青春を取り戻したかのような素晴らしいシーンであった。
かと言って『ハングオーバー!』のような5分に1回ボケをかましてくるコメディではないということだけは言っておく。
飲酒する行為そのものに目が行きがちであるが、何のためにお酒を飲むのかを考えさせる作品でもある。人生を謳歌したいと願う人間が行き着く安易な方法はアルコールであるという危険性。
アルコールを摂取する事により、希望が差し込む描写を入れてからの転落具合はシンプルでありながらも巧妙であったなと。
いやー、でも少し元気付けたい時とかテンション上げたい時とかってお酒飲みたくなる気持ちはめちゃくちゃ分かる。まあこれってドラッグのようなものと同じ部類に入るのだろうけど…。
それを何事も閉鎖的になりがちな年齢を迎えた中年男性を主にして描く事により、新しい自分であったり、解放を表現しながらも行き過ぎた先に待つ崩壊を描くというリアルな視点。
基本的にデンマークは何歳からアルコール類OKという正式な法はないみたいなので、お酒というものは大変近くにあるものだと。しかし本作はデンマークの飲酒文化を道徳的に賛美するようなものでは決してないという監督の想いがダイレクトに伝わってきた。
今年のベストラストシーンに入れるかも。
たぶん日本公開は9月頃だと思います。