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アナザーラウンドの一のレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
3.8
デンマークの名匠 トマス・ヴィンターベア監督作品

「血中アルコール濃度を0.05%にしておくと何事もうまくいく」という、アルコールをめぐる仮説を証明するため、酒を飲み続ける実験に挑む中年教師たちの行く末を描く

今年のアカデミー外国語映画賞受賞作ですが、なんといっても『偽りなき者』のマッツ・ミケルセン × トマス・ヴィンターベアのタッグなんか問答無用で期待度はマックスに上昇してしまうけど、そんな期待を裏切らず本作も非常に素晴らしい作品だった

こっちはアルコールだしがらりと雰囲気も違うけど、どことなくライアン・ゴズリング主演の『ハーフネルソン』を彷彿とさせる

コロナ渦という状況になり、さすがに最近は聞かなくなったものの、大学生が馬鹿みたいに飲まされて命を落とすという事件が定期的に起こっているのが記憶にありますが、一気に飲む行為だけではなく、お酒というもの自体の依存性や危険性はこれまでにも多く語られてきました
それでも世の中にはアルコール依存症という方は大量に存在していて、そんな方々の歯止めが効かなくなり、アルコールに“逃げざるを得ない”過程までもが非常に良く作り込まれている

基本的にはおじさん達が飲みまくってべろべろになる姿をクスッと笑えるというコメディタッチな作品なのだけど、もちろんトマス・ヴィンターベアがそれだけで終わらせるわけもなく…
アルコールを通して浮かび上がる真の人間関係
なにより、笑えるけどいろいろな意味でゾッとするような恐ろしさも見え隠れしてくるから素晴らしい

お酒にと徐々に慣れてしまい、満足できる血中のアルコール濃度はどんどん上昇していくというわかりきった苦しい展開はなるんだけど、やっぱり巧いなぁと思わず唸るほどハラハラドキドキ感も存分に楽しめる見事な脚本

荒唐無稽ながらに依存症映画としても秀逸で、問題提起をしつつも説教臭くもならずに、温かい友情を描いた非常に斬新かつユニークな映画だった

日本の予告では、ただのおバカ映画みたいな酷い作りになっている為、『ワールズ・エンド』や『ハングオーバー!!!』的な酔っぱらい映画を想像してしまう方もいるかも知れませんが、ただのコメディとして観ると肩透かしになる可能性大ですのでご注意下さい

〈 Rotten Tomatoes 🍅92% 🍿89% 〉
〈 IMDb 7.8 / Metascore 80 / Letterboxd 4.0 〉
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