ももいろりんご

アナザーラウンドのももいろりんごのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
4.0
酒は飲んでも呑まれるな!
🍺🍹🍷🍶🍸🍾
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 =STORY=
高校で歴史を教えているマーティン(マッツ・ミケルセン)は、仕事も家庭もいまいちで、毎日をなんとなく、つまらなく生きていた。妻とはすれ違い、息子たちとは会話もない。やる気のない学生とその親からは、こんな授業では大学に行けないとクレームがくるしまつ。
その夜、ニコライの40歳の誕生日を祝い、同僚の男4人で飲むことに。浮かない顔のマーティンに、ニコライは「君に欠けているのは自信と楽しむ気持ちだ」とノルウェー人哲学者フィン・スコルドゥールの理論を紹介する。
『血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと、人は常にリラックスし、やる気と自信が保てる。その結果、人生が向上する』その話に触発されたマーティンと仲間たちは、翌日より仮説の検証を始める。職場の学校内でもこっそり酒を飲み、0.05%のアルコール濃度を保つ。すると、授業が活発になり生徒たちのやる気もアップ。なんだか家族ともいい感じに。調子にのった4人は、濃度制限をなくして更なる効果を狙いにいく…。
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コメディという割にはあまり笑えない。年だからかな、オジサンたちの苦悩が刺さって、悲しくてうれしくて、ラストは甘辛しょっぱかった。いろんな思いが交錯して思いがけず好きだな、これ。
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舞台のデンマークはEUの中でもトップクラスのお酒天国なのだそう。16歳でお酒が買えて、法的な飲酒の年齢制限がない。だから、若者のアルコールに起因したトラブルは大きな社会問題。
映画の冒頭も、高校生たち(マーティンたちの教え子)がチームでビールケース持って湖の周りを走り、ゴールまでに全部のビールを飲み干すというレースゲームから始まるし。(めちゃめちゃバカだけど楽しそう!…っては思った私はやはり酒好き認定😅。)日本とは環境が違うことを、差し引いても、この飲み方は救急車でしょとか、そもそも教師が!ってことで、嫌悪感出る人もいるかもです。
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物語も半ばになると、悪い予感しかしなくてドキドキした。でも、いいことも悪いことも、お酒のせいじゃない。お酒はあくまでもきっかけ。飲むか飲まないか、何をどのくらい飲むか…選択するってリスクのあることだから。
私は、お酒好きだし、お酒の力を借りることが、そんな悪いことだと思わない。自分を変えたくて、やってみた、いつもは曲がらない道を曲がってみた、そして失敗した。
失ったものの大きさと後悔を受け止めるのはキツいことだけれど。劇中での哲学者キルケゴールの解釈「失敗した後の自分を認める」的なセリフが沁みました。
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音楽がよかった!酔っ払いの指導のもと、生徒たちの歌声に震えた。サッカーの眼鏡くん、めちゃ可愛かった。
説教めいた話はなく、それでいい。酒を愛し、人生を楽しむ。若者の未来に乾杯。おじさんたちのやりなおしにAnother round(おかわり)!