praline

アナザーラウンドのpralineのレビュー・感想・評価

アナザーラウンド(2020年製作の映画)
3.9
人生の酸いも甘いも、まるで飲酒量の加減のように表情を変える。
確かにお酒をちょっと飲んで人と対するとうまく話せたり、大胆になれたり、良い要素もあるんだよな。
でももちろん飲みすぎたら正体を失うわけで。

冴えないおっさんたちの、実験にかこつけて友人を励まそうとか、酒を飲もうとか、そんなノリの中にも「好転してほしいこと」への如実な願いが込められていて愛しい。
そしてそのおっさんの変化を、一番体現するのがマッツ・ミケルセン。
彼はやっぱり凄い。
うだつの上がらない茫洋としたおっさんの悲しみ、酒飲んで調子がいい時のカリスマ性、酩酊状態の再現、ラストの涙すら誘う麗しさ、全て明確に演じきっている。
あれほど変わるものか?芝居の骨格がどれほどしっかりしているのか。

本当、ラストシーンのあの瞬間を見るためだけに観てもいいくらいの作品だ。
けれど小市民の愛すべき生活を垣間見る、美しい作品なので是非そこまでの過程もしっかり観てほしいと思うけれど。
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