りょう

FLEE フリーのりょうのレビュー・感想・評価

FLEE フリー(2021年製作の映画)
3.4
 ドキュメンタリーをアニメで表現するという演出は、当事者の安全を確保するための発想だったという説明が興味深いです。その理由が斬新でしたが、アミンの境遇がドラマチックであることとも相まって、ほとんどフィクションを観ている感覚でした。本格的な劇伴も効果的です。
 幼少期から家族と離ればなれになりつつも、ようやく欧州に辿りつくまでの過酷な人生とともに、その秘密をパートナーとも共有できないことがあまりに悲痛です。アミンの姉たちのコンテナとか、ロシアからの密航で出会うクルーズ船の冷酷な反応とかも絶句させられます。
 ただ、デンマークの入国審査で「難民です」の一言で保護されるところは、日本からするとまったく別世界のようでした。日本では現在、出入国管理と難民認定法の改悪が国会で審議されており、これまでの社会問題が顕在化しています。
 日本の難民認定の問題は…長くなるのでやめておきますが、アフガニスタン、ミャンマー、ウクライナなどの戦火や迫害から逃れてきても、日本では難民として認定されません。現在の法案は、その実態をさらに深刻化させるおそれがあるので、外国人の支援者や法律家などが猛烈に反対しています。
 ちなみに、BGMで使用されるa-haの“Take on Me”とか、ジャン=クロード・ヴァン・ダムの引用とか、遠い異国のアフガニスタンの描写であっても、とても親近感を得られる瞬間がよかったです。
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