メザシのユージ

人数の町のメザシのユージのレビュー・感想・評価

人数の町(2020年製作の映画)
3.5
借金取りに追われていた蒼山(中村倫也)は、黄色いツナギを着た男(山中聡)に助けられる。男からデュードと呼ばれ、居場所を用意してやると言われた蒼山は、とある町にたどり着く。衣服も食事も住居も保証された町での日々を謳歌(おうか)する蒼山だったが、出入りするのは自由なのにも関わらず、なぜかそこから離れられないことに気づく。

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多額の借金がある蒼山哲也は、ある町に連れていかれる。そこは様々な事情のある人々が多く集まり、何故かそこでは衣食住に加え性欲までも満たされる。

一見平和だが、二度と出られないアウシュビッツのような町。そこは平和で安全だが人にとって大切な自由が無い。

町では投薬の人体実験、違法な投票、無意味なインターネットへの書き込み等、説明も無くやらされるが何も考えずに、命じられるがままにこなしていけば、その町では生きていける。この町に順応する人の姿は、自分で考えることをやめて、思考停止のまま流されて生きる今現在の人達への皮肉とも感じられた。

映画の途中で、日本での行方不明者や自殺者の「人の数」が画面に表示される。人は数字に置き換えられた時点で個性や人格をなくしてしまう。戦死者でもそうだが、それはただの数字ではなく、ひとりひとりの人生の数だ。この「人数の町」での「この町で人数やってれば良いんだよ」という怖い台詞が印象に残った。