ヤマダタケシ

人数の町のヤマダタケシのネタバレレビュー・内容・結末

人数の町(2020年製作の映画)
2.8

このレビューはネタバレを含みます

2020年9月6日 武蔵野館

・ひとつの場所に集められた人たちが何か指示に従って動かなければならない、ってシュチュエーションの作品って、物語が進むにつれてそのゲームの真相、背景が明らかになっていくタイプと、それ自体が社会的な何かを表わしていくタイプの二つがあると思う(もちろんそのふたつが重なってる作品もある)。日本だと、基本的には前者のタイプが多く、後者の要素が混じる程度の作品が多いように感じるが、今作は圧倒的に後者だった。
・つまり今作のゲームは誰が何のために仕組んだものかは明かされず、そのゲーム自体がある種の現代社会を戯画化して描く事に注力して作られている。
・セックスと食事をエサに完成形の分からない単純労働を繰り返し、そこに疑問を持たない様は現代社会のある部分を切り取っていて、それがゲームのように描かれることでそのグロテスクさが浮き彫りになる。
・以上の話は設定の部分である。で、個人的にはこの設定の部分まではまぁまぁ楽しかった(電光掲示板や配られるパーカーなどのこの作品ならではの異様さの演出も良かった)。
・ただ主人公がここから脱出しようとし始めてから、ようは物語が大きく展開し始めてからは退屈であった。そもそも主人公がここから脱出しようと思う動機は、ヒロインが現れたからだと思うのだが、彼が何故彼女に惹かれるのか、それがどれほどの熱量なのかがあまり感じられ無かった。
・主人公自身がシステムを管理する側に回るラストも含め、作品内で問題提起自体はするがそれに対して具体的な回答が無いように感じた。そうなるとそこに残るのは、戯画化することによって、ある種冷笑的に見た現実だけな気がして、その意味であまりノレなかった。