「あれ?この『町』って実はユートピアじゃない?」
そう思わせてしまう怖さがあった。
借金取りに追われ暴行を受けていた蒼山(中村倫也)は、黄色いツナギの男とに助けられ、「居場所を用意してやる」と言われる。
バスで運ばれたその居場所はフェンスで囲まれた奇妙な「町」。住人は「デュード」、黄色いツナギは「チューター」と呼ばれる。
ネットレビューやSNSの書き込みのような簡単な仕事と引き換えに衣食住が保証されている世界。蒼山もなんとなく「町」に馴染み始めた頃、そこに行方不明の妹を探しにきたという紅子(石橋静河)が現れて…。
衣食住にも困らず、簡単な仕事(まぁ内容はアウトだけど)のために外にも出られる。結婚・出産は認められていないが、お互いの同意のもとであればセックスもOK。フェンスの内側にいる限り安全で安心。
ディストピア映画なんだけど、一瞬だけ「ん?ユートピアじゃね?」ってなるのが怖い。プールで女の子と戯れてビーチボールを追いかけている男がちょっとだけ羨ましく思えた自分が嫌だ(笑)。
よく考えると結構怖い話。『人数の町』の「人数」がなんなのか分かると怖い。「人」が「人数」になるのとかあまり気にしていなかった。戸籍ってなんだろう、人権ってなんだろうとか。多数決みたいな数の理論って正解なのかな?とか色々考えさせられる。
「え?そうなの?まぁ、そうか」という終わり方も好き。考え方次第だけどハッピーエンドだよな。でもよくよく考えたらバッドエンドな気もするけど。こういうぶん投げた感じ好きです。
思い返しても何が正解かわからない。
中村倫也は映画で観るの初めてでしたが良かった。なんかかっこよく見えた。石橋静河は『楽園』ぶり。今度は『きみの鳥は歌える』を観ようと強く思ったぐらい良かった。
荒木伸二監督の初監督作品とのこと。少しザラッとした質感の映像とか、引きの画が多く情報が散りばめられている感じなども結構好きな感じの映画でした。
後半、ある言葉から急にギアアップするのも面白かった。唐突だったけど。
あの「音」が頭から離れない…。
あまり話題になってないですけど面白かったですよ。