モモ

スパイの妻のモモのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.4
さすが黒沢清の演出は全てのカットに根拠がはっきりしていて、明解で見やすい。
神戸という土地、セットの力、豪華なモブシーンが功を奏している。
しかし、ヒロインがフィルムを観てから、スイッチが入って着物に着替えるあたりから、夫への愛情から走り始めるのが、どうも腑に落ちない。
愛といえば愛だが、けむにまかれて、映画はそういうものだと、いわれてるようでのれなかった。
当時の軍人は、日本だけでなく、アメリカも傲慢で
大国の間に翻弄される個人を描いているとはいえ
まだ史実かわからない731部隊を事実のようにして、その上で現代の作家がフィクションを展開しているのは、とても傲慢な気がした。知的誠実さよりも、無意識のイデオロギーに感化されたまま表現したのではないか。
タランティーノがナチをだしさえすれば、自分の暴力描写を好き放題やっていることに辟易した、イングロリアスバスターズのように。
フィクションをやるなら、歴史を都合よく扱うのではなく。
過去を裁くなら、ちゃんと真正面から調べて文献を両方の観点からあさって、そういう題材の映画でやるべきだ。
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