2020年鑑賞208本目。
「お見事!!」
この一言が言いたくなる、まさに見事な作品。
本作を見るために黒沢清監督作品をできる限り予習してきましたが、その作品たちの中のどれにも当てはまらないような快感が感じられる作品でした。
時は第二次世界大戦真っただ中、自分の夫が敵国のスパイなんじゃないかと疑う妻の視点から、個人の中での「戦争」を描く作品で、サスペンス的な要素もあれば、スパイものとして楽しめる部分もあり、ネタバレなしで語るのが難しいのですが、いい意味でジャンルがわからない。
こういう作品も撮れるんだなあ、と黒沢清監督の新たな一面がわかった感覚にもなるし、監督・黒沢清をある程度知ったつもりでいた自分が恥ずかしくなった。
役者陣もかなり良かった。特に主演の蒼井優はすごい。話し方がまさに当時のこういう階級の女性感があって、リアルだった。
東出さんはやっぱりこういう怖い役が似合う。いい意味でも悪い意味でも表情が怖い。
もちろん、黒沢監督の代名詞ともいえる恐怖表現もいい感じに作品に活かされていて、水死体のリアルさとか、終盤のあのシーンの痛々しさは「清だなあ」と思った。
もっと語りたいけど、ネタバレになりやすいので、とにかく見て損はないとだけ言って終わります。
銀獅子賞受賞、納得です。おめでとうございます。お見事でした。
2020/11/23観賞