髭ゴリラ

スパイの妻の髭ゴリラのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.8
「これは素晴らしい!」と同時に
「よくここまで作ったなぁ」と衝撃的であった。

時代とともに薄れていく残酷な戦争像。
また、近年身近に起こる性差
その根源にド真ん中から向き合う姿勢。

その事実と歴史を
この現代に最大限反映させた作品。

日本の体制に嫌気をさし行動しようとする
高橋一生。

その高橋一生を慕い愛を模索する
蒼井優。

あまり内容に触れずに感想を述べるのであれば...
中盤までは各々が「真逆の思い」を
戦争渦の中で両者が見出そうとして、互いに気持ちを高め合ってるのかと思いきや、どちらも「個の想いを果たしたい」というエゴの塊であることに驚かされた。

時代関係なく、人間のSagaともいうべきか...

坂本龍馬と千葉さな子を彷彿させるような
関係性差に見えた。

個人的には、スパイ云々よりも
男性君主の時代に飲み込まれていった
女性たちにフォーカスを当てた作品と取れた。

①かつての昭和映画のような
テンポのいい会話劇。
→あえて言葉1つ1つの重みよりも
 HIPHOPでいえば「フロウ」のような
 雰囲気、耳心地、リズムで引き込む技法だった。

②そしてこの映画最大の魅力
「長回しワンカット」
→テンポのいいカット割で引き込む映画も多くある中
 大変な時間と労力をかけて撮影された意気込みを感じ
 1秒1秒の重みが高揚感になる。

③後半までの流れからの終盤の前衛的描写
→やっぱりすごいよ...蒼井優の怪演。
 「彼女がその名を...」や「斬、」など
 あらゆる出演作の要所をブレンドした見事な演技。

エキストラ多数、壮大なセット感。
それなのに主な演者は少なく、無駄な配役が一斎無い。

映画を多く観てきた人ほど
その細やかな配慮が印象に残り感動すら覚える。

そういった意味では
ここまで「メッセージ性」と「観客的視点」
の両立を図りながら
観客をのめり込ませる作品はなかなか出会えない。

また、これがNHKバックアップというのが驚き...

映画として芸術として
日本人として世界に向けて
発信され、残されていくべき作品。
髭ゴリラ

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