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スパイの妻のFREDDYのネタバレレビュー・内容・結末

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.6

このレビューはネタバレを含みます

黒沢清監督が手掛けた、NHK BS8Kで放送されたTVドラマ『スパイの妻』の劇場版作品である本作は、太平洋戦争開戦間近の1940年、貿易会社「福原物産」を営む夫・福原優作とともに神戸の洒脱な洋館で何不自由のない生活を送っていたとある日に、物資を求めて満州に渡航した優作と優作の甥・竹下文雄が日本へと連れ帰ってきた、謎の女性・草壁弘子の遺体が見つかったことを神戸憲兵分隊本部の分隊長で幼馴染でもある津森泰治から聞かされたことで不安を募らせていた中、関東軍による恐ろしい人体実験を目撃した優作らが正義のためにこの国家機密を世界に知らしめようと秘密裏に準備をしていたことを知り、"反逆者"として疑われる愛する夫を信じてともに生きることを決意した福原聡子の姿を追ったものとなっているのだが、舞台が太平洋戦争開戦間近の日本であり、731部隊による満州での人体実験を題材とした内容となっているので人を選ぶ作品であることに間違いはないでしょうし、歴史の闇を背景に織り成される夫婦の物語もまた、"スパイの妻"として愛を貫こうとする聡子の姿を見ているだけでも面白く、今後の展開が気になり最後まで目が離せなかったことも事実なのだが、どこか物足りなさが。とにかく評価が難しい作品でしたね。率直な感想としては本作は決して悪くはなく、舞台セットなどが若干チープに感じてしまうのはTVドラマを劇場版に再編集したものなので仕方がないとして、それでも聡子を演じた蒼井優の演技はとても素晴らしく、彼女の豊かな表情の演技が見れただけでも観る価値は大いにありましたし、太平洋戦争や731部隊に目を向かせられた点もやはり作品の存在意義が感じられ、個人的には最後まで楽しめました。ただ、説明不足な点もあって展開に強引さが見受けられますし、きっと映し出される物語の背景や夫婦の人物像を読み解こうとすることで活きてくる作品だと思うので、気軽に視聴ができない点は気になるところではある。
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