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スパイの妻のdeenityのレビュー・感想・評価

スパイの妻(2020年製作の映画)
3.8
濱口竜介監督がゴールデングローブ賞を受賞しましたね。本当にめでたいことで、いつか鑑賞したいと思っていますが、躊躇するポイントがいくつかあって。3時間という上映時間に加えて村上春樹原作となると恐らく相性は悪いだろうなと。そして濱口監督は黒沢清監督と師弟関係があると聞いたこともあるので、清映画が苦手な自分には追い討ちをかけるように躊躇ってしまうんですよね。

とはいえ少しずつ予習はしていこうと思い、まずは黒沢清作品ですが、脚本に関わった本作。ヴェネチア国際映画祭で評価されてたのは知っていましたし、これを機に見てみました。

結論から言うと、黒沢清作品の中では結構見やすかった印象がありました。
戦時中、日本軍の衝撃的な事実を知ってしまった優作は、正義感からその事実を公表しようとするが、売国行為ではなく身近な幸せを望む妻の聡子。ミステリー的であり、且つ、ラブロマンス的な作品でもあり、そこに黒沢清らしいダーティーな世界観がマッチしていたように思います。

本作は役者が良かったですね。優作を演じた高橋一生は渋い声と落ち着いた物腰が絶妙な雰囲気を醸し出していましたし、何よりその妻・聡子を演じた蒼井優の感情豊かな演技ですね。素晴らしかったです。まさに「お見事でした!」と言わせんばかりの熱演でした。

ただ、作品自体の疑問点としては優作、あるいは聡子が実際どういう人物だったのかということ。
まあ聡子は優作とずっと一緒にいたくての行動だったと思うのですが、結果的にそれが正義かどうかはわからないし、じゃあ優作の行いは正義かと言われると、それも一概には答えられない。
騙し合い合戦みたいなことなんですかね。スパイなんですかね。なぜそうなったんですかね。自分の中でしっくり来る解釈みたいなものが掴みきれなかったのが悔しいですが、初めて黒沢清作品を楽しめたかなとは思います。

とりあえず次は『寝ても覚めても』から行きますかね。
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