このレビューはネタバレを含みます
黒沢清のわたしはスパイの妻になってしまって、、。
脚本濱口竜介、野原位。
脚本監督黒沢清。
2020年ヴェネチア映画祭銀獅子賞受賞。
黒沢清の最新作。大好きなJホラーを牽引し、今や多ジャンル化作品を撮っているような作風の黒沢清監督。
ここで鑑賞より抜きおさらい。
劇場で見た時、あまりの怖さと静止に2度鑑賞しに行った催眠猟奇ホラー「CURE(キュア)」
私は私を見てしまう、それも悪い役所広司をみる映画「ドッペルゲンガー」
テレビ作品だが、かなりのギョっとする降りそそぐ霊「降霊」
クロキヨの小津アプローチ家庭劇「トウキョウソナタ」
クロキヨの私の好きな幽霊と旅してみた「岸辺の旅」
わたしの2010年代ベストテンに食い込む大好きな作品。さながらクロキヨのSF作品はたまた「アカルイミライ」のリメイク「散歩する侵略者」
前作は、前田敦子を迎えさながらクロキヨの異国ミュージカルロードムービー「旅のはじまり世界の終わり」
「キュア」からなるべく劇場鑑賞している作家。いや初めては「スウィートホーム」(1989、揉めたから絶版だ。)からだ。
2021年本作チラシをみて「NHK」の文字。何やら戦争スパイ風な感じ。見逃してしまい2022年2月みてみた。
いやあ作風が著しく変わりましたねぇ。かつ成功している素晴らしさ。
なんかBSの戦争スパイドラマに2時間もののような様相。
脚本には今、日本映画にオスカーノミネートの偉業を達成した濱口監督の共作。
物語は、戦争中の高橋一生物産会社社長。どこかリッチな成金社長。妻には、蒼井優。ある日旦那留守中に東出昌大率いる軍長との出会い。戻ってきた一生社長にあらぬ噂がかかる。そしていつの間に愛は、蒼井優にスパイの妻たる宿命が立ちはだかる、、みたいなお話。
高橋一生社長の素晴らしい影と栄華と闘志ある男っぷり。
いろいろありましたが、年々素晴らしい芝居に磨きがまさに芸肥やしになってる東出昌大。軍長たる格式と風貌。とても良かったです。
そして、本作はまさに女優「蒼井優」の本領発揮。スパイの妻たるクロキヨ演出に染まり、観客が魅了されていく女っぷりとラブと突進ぶりを魅せてくれる。
クロキヨにヴェネチア受賞をもたらしたのは、間違いなく蒼井優の立ち振る舞い妻に魅了された証だと思う。
本作の黒沢清派、濱口監督の脚本たる台詞の精緻さと歴史的事象の構築の仕方。クロキヨが魅せる小道具、本作では「8ミリ」なのだが、素晴らしき今まで練り上げてきたホラー要素を遺憾なく発揮していた。全然怖くはないのだが、薄気味悪い、ヌルッとした感覚を植えつける素晴らしい効果を演出している。
黒沢清フィルムでよく見る「バス」「行進」「白黒(ブラックアンドホワイト)」必見だ。
Jホラー前のVシネ期で鍛えあげた低予算路線を最大限に生かし、「時代劇」「歴史性」をそぎ落としながらも、台詞、演技で黒沢清のスパイ映画を魅せてくれた。
本作では、軍隊の行進で「時代」を感じた。
また電車に乗るシーン。全く電車を映さずに人の往来だけで電車を感じ、これから旅をするシーンを魅せてくれた。これこそ黒沢清演出だと思った。
ラストクレジット音楽も良かったなー。ミュージシャン長岡亮介が作ったとのこと。オリジナルラブのコンサートでCD出てたっけ?!
本作の高橋一生社長のラストカットが誠に素晴らしいシーンで、個人的に好きでした。クロキヨらしいカットでしたねぇ(うなる)
蒼井優さんがすこぶる良くってよの上品から激情に激しい気持ちまで表現されていて良かったっすねー。本作ヘタしたら演劇チックなんだけど一生社長と時に優雅に、時に寄り添う感じ。性向シーンなんて一切ないけど良かった。
戦争中本当にこういう方たちが恐らくいらしたんでしょうね。みえない戦いを魅せてくれた。
勿論鵜呑みは、しないがこんな方たちがいらっしゃったに違いないと思わせてくれたドラマでありました。
それは今までの黒沢清作品にはないテイストにみえた。ヴェネチアに認められた黒沢清監督。それが新しき作風で認められた事は、重要だと思った。
今回はホラー感覚は、全く皆無。それよりも戦争テイストな新しきクロキヨ映画でした。
さて
黒沢清監督が魅せるわたしは、スパイの妻になる
黒沢清ファンは是非。
フィルマ版追記
本当、日本っていわゆる「日本映画」に無頓着というか、いわば無視気味な傾向ですよね。
本作脚本担当の濱口監督がアカデミーノミネート!
本作の黒沢清監督がヴェネチア銀獅子賞受賞!
わたしの理想はね、テレビ地上波(CSでも可)で二時間枠でね、特別枠で黒沢清監督、濱口監督スペシャル特番扱いの番組造れる次元の出来事だと思ってるんですけど、。なんにもないでしょ。
映画メディアっていっても、雑誌はもはやほぼかい滅状態。
それは韓国に負けるよね。だけど作家性に感していうなれば、全然アジアでは、断トツの優れた感性、監督ばかりだと個人的に思ってます。
その監督のひとりは、黒沢清なわけで。
立教、
蓮実重彦派閥、
ドレミファ娘から発生し
スウィートホームで伊丹と揉め覚醒し
Jホラーを作りこみ
90年代Vシネマ系で
ヤクザ映画からバディものまで撮りまくり
2000年代からは、全く新しい作風にみえてきた黒沢清監督です。2000年代からなんて映画評論で、一冊本作ってもいいくらいだと思うけどなー。
監督は、今や欧州映画祭を常にノミネートしている日本映画の素晴らしき映画監督だと、
なぜ、日本映画ジャーナリズムは褒めない!とわたしはいいたいっすね(今回おおきくいってみた)
つまり、わたしは、黒沢清映画が大好きで。これからも応援しまーす!!
ドレミファ娘の伊丹十三の変な動きを真似できる地方ファンより、感想文でした。