けまろう

スパイの妻のけまろうのネタバレレビュー・内容・結末

スパイの妻(2020年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

『スパイの妻』観賞。17年ぶりの快挙、銀獅子賞受賞作。カットの節々から伝わるグローバル水準。クライマックスのどんでん返しからラストの余韻まで含めて素晴らしかった。
演者も素晴らしい、特に高橋一生と東出昌大の二人の演技は物語の不穏感の演出に必須だったろう。蒼井優は少し舞台女優過ぎた気が。声色も話し方も完全に原節子。人物を正面から捉えた対話のシーンなどは小津安二郎式で、「小津安二郎×原節子」が「黒沢清×蒼井優」に転回したように感じる。でも映画内で言及されたのは溝口健二だったなぁ、なんでだろ。
Cinematographyは従来の黒沢清風で静謐で見応えのあるロングショットがとても良かった。テーマは確かにこれまでにない、日本における戦争の闇でそこも国際的に評価されたのだろうか。(被爆国として哀れみを集めがちな国際世論にあって)コスモポリタンとしての使命を全うしようとする、高橋一生演じる福原優作の姿勢も胸を打ちそう。
一番印象的なセリフはラストシーン直前で精神病院に入れられた蒼井優がもらす一言。「私は正常です。でもこの国では正常であることが異常であることになってしまう」という趣旨のセリフ。戦争が人を狂わせる、という言葉の真理を突いた言葉。
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