スパイの妻の作品情報・感想・評価

上映館(107館)

「スパイの妻」に投稿された感想・評価

yuling

yulingの感想・評価

5.0
映画の背後で大きなものの動く音がした、それに立ち会いたい、なるべく近くで
蒼井優が素晴らしい
途中のメロドラマにはうんざり。
OuiLow

OuiLowの感想・評価

4.3
歴史物ということでしたが
黒沢清の記号が散りばめられ
車移動と世界の終わりが見られて満足。

暗闇にぼうっと何かが現れてくるのではないかという期待を持って見てました。
黒沢清監督の映画を映画館で観るのは、20有余年前の「CURE」以来。

当時は隔週発売のキネ旬を買っていて、そこで数人のうるさ型の批評家がこぞって大絶賛をしていて、どうしても気になって、普段はあまり行かない映画館に足を運んだ。世紀末の現代的で虚無的なホラー。引きのカメラワークと、不安定な角度で不安を呼び起こす演出。輪郭を切り取りにくい危険な液体のようなイメージのストーリー。

当時、入れ替え制のない映画館だったので、一度観てモヤモヤし納得できなかったので、続けて二度目を観たが、さらに濃い霧が立ち込めたような気分でフワフワとうつろに映画館を後にした。
確かにストーリーも演出も独特ながらよく考えられている。でもどこか腑に落ちない。すごく面白いとは思えないし、好きでもない。何だか実は中身は空っぽのような気もする。割り切れない気持ちを持て余して、以来、かの監督の作品を観る機会に恵まれなかった。

本作には、「CURE」の黒沢清監督らしさも確かに残っていたけれど、かつては空っぽに感じられた中身の一部が埋められて、格段に観やすくなっている気がした。

一つは、歴史と時代考証を取り入れていること。そして伏線をいくつか張り巡らせてあり、その中に昔は感じられなかった遊び心と懐の深さが感じられたこと。

1990年代のNHKのドラマは好きではなかった。小綺麗なセットや美術に、何の味わいも感じられず、それだけでストーリーを追う気が失せたことすらあった。

本作には残念ながら、その臭いが残っている。夫婦の暮らす洋館、夫の経営する商社の部屋や倉庫。汚れが本物ではないし、奇妙に整っていて、作りものの臭いが強い。よく思い起こせば、軍の施設の室内も、船の倉庫もそうだった。

スパイの妻という題は、主役の妻目線のもので、彼女の夫はいわゆるスパイとはいえない。少なくても夫本人は自分をスパイだなんて少しも思っておらず、彼は自らをコスモポリタンだと語っていて、俯瞰で見れば夫の考え方こそ妥当だといえる。

つまり本作は思い込みの強い女性の、極端な生きざまに、時に息を呑み、ハラハラし、応援して頭を抱え、裏切られて、また裏切られて、さらにまた本人がお見事に裏切られるストーリーでもある。

戦前の港町の裕福な家庭のモダンぶりには大正浪漫の残り香がある。寒風の吹きすさぶ有馬温泉の老舗旅館のシーンには、明治や大正期の文人たちが温泉旅館に長逗留している様子も思い浮かぶ。

時々、兵庫や大阪で戦中を過ごした手塚治虫の「紙の砦」や「ガチャポイ一代記」、「どついたれ」のシーンがよぎったりもした。

そんな時代考証ぶりや、マニアックになり過ぎないように抑えた細菌兵器の開発を巡る物語のプロットが、この監督の好む題材や演出の空虚さを幾分埋めて、普通の人でも理解しやすく興味を持てるようにと調理されて提示された印象があった。

深くはないが浅くもなく、それなりに考証が加えられているので観ていられる。黒沢清に、歴史を加えると、それなりに新たな化学変化が生じて、いくらかの大衆性と見応えとが増した印象になっていた。

戦前の上流階級の独特でやや不自然な堅苦しい話し言葉を、いかにも黒沢監督らしい長回しの演出で撮影するので、序盤から違和感と芝居臭さがあることは否めないが、字幕で見る外国人には、そんな短所はほぼ分からないだろうし、万国共通の題材に、当時独特のいかにも日本らしい文化と欧米の文化とが混淆して描出されていることもあって、海外受けする作品だと思う。

そして全部ひっくるめて、初めのアイデアのいくつかはすばらしく面白いものの、ちょっと表層的でもあり、類型的なエピソードを組み合わせたストーリーに陥りかけているが、それでも黒沢清監督と歴史との相性は良く時代考証が作品の質を上げており、さらにホラーやサスペンスで鍛えた手法も時々見られて、その部分の演出力はやはり極めて出色で飽きさせられない。

総じて、登場人物がやや現代的すぎ、さらに全体に、意図的にテーマに関わるストーリーの掘り下げを浅くしていて、虚構独特の物語としての脆弱さにも映って、ほんの少し物足りなさも残るが、虚構を利用した工夫や、独特の考証にシーンによって味わいがあり、戦中を扱った創作としては意外性もあって、見る価値のある作品だと思う。

あと、人間の根源的な欲望や情動に訴えるシーンがあれば、普遍的な傑作にもなりえた作品だと思うが、それでもいくつかのアイデアを組み合わせ、知的に虚構を組み立てたという意味で、模範の一つといって何の過言もない作品だと思う。

歴史とフィクションとが嫌いでないなら、こんな作品も見ておくと、ちょっと幅も広がり、映画を観る目も肥えると思う。
いろんな要素があって、不思議な作品だったなぁ。高橋一生の胡散臭さがとてつもなく良かったです。黒沢清は、ちょっと笑かそうとしたところありましたよね?
hana

hanaの感想・評価

3.3
実話と思ったらフィクションなのか。!
最後、文字で終わらせてたのが気になる。(時間とか制作の問題もあると思うけど)
でもそれがあえてリアルに感じたり。

聡子(蒼井優)の演技が、昔風で良かった。
高橋一生と蒼井優の組み合わせは良いね。ロマンスドールに引き続き。
ちょっと言っておきたいのは面白いです、この映画、というか黒沢清は学識めいた言葉、シネフィルの衒学めいた言葉あるいはジャンル映画じゃんゲラゲラのどれかにおいて語ることが有効であるみたいな感じがあるが、まず最初に来るのは面白れーのはずだ、こと今作においては恐らくたぶんフィルモグラフィの中でも相当分かりやすい部類、テーマを見出しやすい作りになっているので近作の『クリーピー』がサイコパスを使って現代で吸血鬼映画だ!という一般層(この言い方…)が正気を疑う作家フルチン映画だったのと比べれば一目瞭然と言える。分かりやすいと言えば『散歩する侵略者』はどうなったんだとかあるが、まぁ近年のクロキヨは分かりやすい、更に言えば共感しやすい作りに移行してんのかなと思う。
夫は正義に燃えて情を切り捨てて進むが、妻はみみっちい個人の幸福を求める、対比は末路も含めて男のしょうもなさを強調させるがこれは現代的というより増村保造っぽいんだろう、女が自我が強くて何でも口にして態度も上がって下がってを繰り返す様が凄くそれっぽい。
撮影・照明がNHKドラマの人選なので特有ののっぺりとした、体裁だけ高級感があるような画面で個人的にはあんまり良くないと思うがそれはそれで大河感、歴史モノ感を醸し出しているように思う。「お見事!」はもしかして大河の大仰な芝居に対するオマージュなのかも知らん。
映画狂人らしさは一番こだわったと語る当時のフィルム感、『CURE』であるのはもちろんフィルムを通して決定的に何かが変化する現象にこそ映画の魔を追究するこだわりが見える。
東出昌大が良い。たぶん全シーン良い。「善良な市民のおかげで国家の安泰が保たれた」「心を入れ替えてお国の為に尽くしなさい」「やっぱりお前も非国民だな、万死に値する」いちいち台詞が良い。あの狂気を孕んだ眼。女性を殴るのが様になる。「純粋な青年が戦争という狂気に呑まれる」定型は近未来ディストピアSFとかにもいくらでも転用可能だと思うのでもっと直接的にファシスト軍人の東出昌大を見たいと思ってしまうのが人情だろう。
以前ならあの超絶に決まったショットで終わっていたと思うのだが、以降もその後の話をちゃんとやる、歴史モノだからなのかも知れないけど今回はとにかく真面目である。いつもの悪趣味はフィルムと東出昌大に集中されている。
紛れもなく黒沢清だった。

ただなんでこんなに画面が眠たいのか。本当に寝るかと思った。とてもテレビっぽく撮れてあとからなんとかしようと頑張った結果なんだろうか。
画作り自体はいつもよりよかったな。

しかし現代ではない世界観や底知れぬ怖さ不安さを持つ時代って、とても黒沢清の作家性と合うなと思った。
わりとホラーって言ってもいい。所々こわかった。
思ったより戦争映画やったし、思ったより暗かったなあ。
おもしろかったです。

蒼井優の演技すごすぎる…びっくりした…高橋一生と東出昌大もすごいしこわい。ナイスキャスティング。

服装とか街とか家の感じが素敵。和服も洋服もかわいかった。
フィルムをスクリーンに映すのも良かった。さとこ(蒼井優)がそんな手際良くはなくても慣れた手つきでフィルムをセットするのが特に。

それにしても音楽との相乗効果で普通にホラーかと思った。笑

時代によって、狂っている側とまともな側が逆転しうるのが1番こわい!
暴力描写あり:拷問で爪を剥がすシーンがある シーンに入る前は分かりやすいので苦手な人は耳を塞ぐといいです 映像は背後からなので注意するのは音声のみ


とても好きだった。
国を敵に回しても自分の正義や愛を貫くことができるか? と問い続ける映画だったと思う。あと撮り方が印象的。衣装も素敵。心にくるセリフがいくつかあって、是非劇場で見てほしい。
なんとなく、ジョジョ・ラビット好きだった人はこっちも好きなんじゃないかなと感じた。
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