ぴのした

はりぼてのぴのしたのレビュー・感想・評価

はりぼて(2020年製作の映画)
4.0
私の地元である富山市の市議会に巣食う老害を追求するテレビ局のドキュメンタリー。

そもそもこの事件に関してはざっくりとしか聞いてなかったので、最初から順序だって詳しい経緯を追うだけで面白い。

昨日まで偉そうにふんぞりかえってたやつが、次のシーンで不正を暴露され泣きながら頭を下げる可笑しさはコメディのよう。

もちろんこれは個々の政治家のモラルの問題ということもあるだろうけど、根っこには富山市民の政治に対する当事者意識の低さがあると思わずにはいられない。

不正をしても土下座をすれば「許してやろうと思っちゃう」と笑うおばちゃんたち。追求されて「お前らが騒ぎ過ぎなんだ」「みんなやっている」と開き直る議員たち。不正を許す土壌が完全に用意されている。

富山はずっと自民党が強い。災害も少なく、持ち家率や家の敷地面積もずっと全国トップクラスで、今の生活に不満がある人が相対的に少ないのかもしれない。あるいは、不自由を感じても、それを自分の責任だと感じるしかないのかもしれない。その現状を自民党の代議士のおかげと思う人は少なくないだろう。

上に従えば安心。下手なことをするから痛い目に合う、と思ってる。政治だけじゃなく、教育やスポーツ、地域の集まりでもこういう「上に従えば万事うまくいく」思想が根っこを張っている。

富山に過ごしてきた時に感じてきた、その言葉にできない生きにくさを、この映画を見て思い出して、なんとも言えない嫌な気分になった。

高校時代、中国の古典で出てきた「政治家が何をしてるか知らないでも生きていけるというのは、その時代が平和な証拠だから一番良いのだ」的な話に友達と共感していたが、今はそれは違うとハッキリと言いたい。