チッコーネ

フォートレス・ダウン 要塞都市攻防戦のチッコーネのレビュー・感想・評価

3.5
中東各国にまたがる山岳地帯に拠点を持ちながら、どの国でも迫害の憂き目に遭うクルド人。
中東で繰り広げられるさまざまな紛争へ、否応なく参加して重要な役割を担ってもいる、クルド人。
彼らのトルコでの受難が描かれた作品で、独特のダンスや掛け声などの文化も確認可能だ。
また女性兵士の活躍が描かれているのは、イスラム系民族の中で珍しく、男女平等の考えが息づくクルド人ならでは。

迫力のロケはなんと内戦中のシリアで行われているほか、実際にトルコ軍と闘ったゲリラ構成員も役者として出演しているのだから、すごい。
劇中で幾度となく発生する爆発の撮影、トルコ軍戦車・軍人の制服調達法など、驚き気になる点も多々。
専門的な装備を備えた国の軍に、素人ゲリラが挑むというだけで無理難題だが、悲壮な戦い描写はどこか淡々と綴られ、勇壮な音楽に煽られることもない。
追い詰められたキャラクターたちの言動には重みがあって、哀切を誘った。

舞台となったディヤルバクルの街は城壁で囲まれているが、トルコ国民とクルド人居住区を区別するものではなく、古代アルメニア王国時代から残る歴史的遺物。
現在はクルド人を一掃、団地を建てているというのだから哀しい。
しかしトルコ側は、過去にクルド人側の武装組織によるテロ行為にも遭っており、争いは根深い…、そもそも諸悪の根源は、ヨーロッパ諸国の身勝手な分割にあるのだ。

本作で描かれるトルコ軍の包囲作戦の情報は、脱出者により発信されたらしいが、ここ日本のインターネット上で詳細は発見しづらいため、告発力や資料価値が高かった。