アメリカ合衆国建国の父の一人アレクサンダー・ハミルトンの生涯を題材にしたブロードウェイ・ミュージカルをDisney+が映像作品として配信したもの。
脚本、作曲、作詞、主演を、「イン・ザ・ハイツ」で知られるリン=マニュエル・ミランダが手掛けている。この人はやはりとんでもない才人。インターバルを挟んで160分間の舞台でずっと歌い続け、お客さんを笑わせ、感動させる。そこで使われる歌も台詞も、全部彼が作っているのだから、いったいどれだけの時間と労力を費やしてきたのか、その熱意に圧倒される。
18世紀の話なのに、登場する人物の話し方は現代的。イギリスの植民地であったアメリカが独立するという、歴史的な大事件をあくまで若者の夢として描いている。日本で言えば、ドラマにもなった「SHOGUN」とか、その後の明治維新辺りに近い時代設定なのだが、日本でそれらを軽快なミュージカルとして作る人はいるだろうか? やはりアメリカは自由の国なのだと思い知る。
プエルトリカンのルーツを持つミランダらしく、史実とは違い配役は多様な人種で構成されている。19世紀の話だから音楽はオペラっぽいのかと思えば、ラップやソウルをベースにした現代的なもので、途中でヒューマンビートボックスが登場した時は、客席も爆笑だった。この軽快さが最大の魅力だ。
しかし、あくまで舞台を撮影した実況映像なので、現場の緊張感を味わえる一方で、映画的な映像表現は基本的に無しなのがちょっと残念。音楽のライブ映像を観る感覚で楽しんだ。