圧倒的に不出来な快作
近くのミニシアターでたまたまポスターを見ると、ロケ地が奥河内ということで興味を持って鑑賞。
出身が南河内で、高校が奥河内なのです。
パッケージのどことない土屋太鳳感と、「トリガール」っぽいタイトルから薄々そんな気はしていましたが、トリガールの原作と同じ方なんですね。
トリガール観てませんが。
さて先に感想を述べてしまうと、とても好きな映画でした。
ただ、出来不出来で言うと圧倒的に不出来だったと思います。
物語の舞台は大阪の奥河内。河内長野や富田林、千早赤阪村などの、和歌山寄りのあの辺りです。
現在も鬼が存在するという世界観で、主人公のももかは鬼の血を引く女の子。
高校入学初日、鬼バレせずに夢の青春ライフを送るべく張り切って登校するところから物語がスタートする。
鬼バレってなんだ。
で、まあ紆余曲折ありまして、幼馴染のレンくんらと共に、父親たちが作り上げるもあまりの難易度に製作を挫折してしまったという幻の脚本を基に、一世一代の連鎖劇の製作に臨んでいくというお話です。
連鎖劇の存在は知らなかったのですが、ベースを撮影した映像で上映しながら、要所のアクションやBGMを演劇形式で披露するというものなんですね。ヒーローショーやアトラクションでよくあるようなアレです。
クライマックスで成果物として発表される連鎖劇はそれなりのもので(高校生クオリティにしては)可愛げもあり楽しいです。
またロケーションも、ちょっとだけ出てくるラブリーホールや関西サイクルスポーツセンターなど見覚えがあってニッコリしました。
しかしその大部分は映画として非常に低レベル。
というか完全にテレビドラマ。
カメラワークからロケーションまで、ほとんど同じ映像でもうちょっと何とかならんかったのか。
それから関西人の描写がキツすぎる。
特に担任のあの感じ、漫画やドラマで関東人が描くようなステレオタイプな鬱陶しい関西人。見てて恥ずかしいからホンマにやめてくれ。
脚本もまるでダメで、そもそも鬼であることのコンプレックスの向き合い方も、コンプレックスの正体もイマイチよく分からない。
小学生時代の僅かな回想シーンがそれに当たるのかもしれんけど、いかんせん軽すぎる。
そしてそれに呼応するレンくんのパートが無いため、終始彼に惹かれた動機がよく分からない。
多様性の容認みたいな要素もまるで無く、ツノが生えてるだけの可愛い女の子としてしか描かれていないのだ。
怪力と俊足の設定もほぼ忘れられていくし。
あとまた、レンくんと親父との確執もボンヤリとしていれば、親父の悩みの正体までボンヤリしていて、悩んでいるのは分かるが一体何に悩んでいるのかはさっぱり教えてくれない。
というか親父の海外ロケは必要やったのか?
それから何より気になったのが、親父たちが連鎖劇の製作に挫折した要因がまるで説明されていない点。
いや何となくは分かるよ、そりゃ撮影映像と演劇の組み合わせなんざ、構図からタイミングから難易度が高いってことは。
しかしじゃあなぜ親父達に出来なくて、ももか達に成し遂げられたのか。
そこがまるで撮られていないというのは、今作の伝承という主題を描く上では致命的な瑕疵というほかない。
それから、いくら何でも連鎖劇のラスト、みんなで作り上げてきた作品を思いっきり私物化してしまうモモカの行動は、あれは絶対にいかんやろ。
映画としてとかじゃなくて、人としてダメ。
その他も細かい点で言うと、仲間集めパートの前フリがヘタクソすぎる。というか出来ていない。
ティアラがメイク上手い設定とか、インスタにそれを投稿している事実とか、関西サイクルスポーツセンターで撮影してる予定とか、全く示されていなかったので、こちらとしても「そうやったん?」と言うほかなし。
イケメン先輩の表現に対する情熱を仄めかすシーンも一切なく、セリフで勝手に補完される。
ほんでそれから、桃太郎とかけたにせよ、団子で仲間集める流れもよく分からへんし。
ことほど左様に、必要なショットが悉く用意されておらず何故120分近くも上映時間があるのかが逆に不思議なほど。
と、ここまで言っておいて言うことではないけれど、僕はこの作品が結構に好きです。
何でかはよく分からんのですけど、多分主役の子が可愛いからかな。
バンドやってる妹とかも、全然上手くないし、ブルーハーツどっからきてんとかあるけど、愛おしい。
弟は言わずもがな、愛おしい。
ぐっさんの父役も、ホンマにマジで大したことしてないけど、なんか好き。
ダメな映画ほど愛おしいというのか、ところどころ見せてくれる熱量にやられちゃったのかもしれません。
あのクライマックスのティアラちゃんとのハイタッチとかね。シーンとしてはホンマに不出来なんですけれど。
という訳で、間違っても1800円払って観るべき映画としてオススメはしづらいのですが、個人的には好きでした。
大阪南部出身の人で、青春コメディみたいなジャンルに弱い方はぜひ。