フライ

アウトポストのフライのレビュー・感想・評価

アウトポスト(2020年製作の映画)
3.9
去年アメリカ軍が撤退したアフガニスタン紛争での実話と言う事も有り感情移入しながら鑑賞出来たが、終始地獄の様な展開に恐怖と苛立ちを覚えたし、メインの銃撃戦は一見の価値が。ただそれ以上に、本当にこれ実話なのかと思える位、素人でも分かる酷すぎる場所の前哨基地に、アメリカがアフガニスタンで無駄な時間を費やした理由の一端が垣間見れた。

2006年アメリカ陸軍は、アフガニスタン北部に現地住民と共に連携し、タリバン兵流入を防ぐ為、幾つもの前哨基地を設置。一部の基地は山脈の谷間に設置され、アナリストからはその基地を19世紀に部下と全滅した将軍の名前を引用し、キャンプ'カスター'と呼ばれていた。
襲撃を避け真夜中にヘリでキーティング前哨基地に向かうスコット・イーストウッドが演じるロメシャ他兵士達。基地に着くと、他の顔見知りの兵士達とおどけながら挨拶をすませる。しかし朝になり基地の場所がどんな所にあるのかを知ると愕然とする。そこは岩場の高い山に囲まれた、敵から格好の標的になる谷底だった。何時も単発的に襲撃を受けていたが、その日も銃撃があり、なんとか撃退するも負傷兵が。
前哨基地の目的でもある近隣の村と連携しタリバンから守る為、村の長老達とオーランド・ブルームが演じる基地の指揮官キーティング大尉が交渉。明らかに基地を攻撃した戦闘員がいる中、それをあえて見逃しアメリカの金銭補償などの約束により武装解除含め交渉が成立したかに見えたのだが….
翌日も単発的な攻撃がある中、大きな問題が発生。高級将校からの無理強いで、危険を犯し命がけで基地に持って来た巨大な戦術車両を戻せと言うもの。ロメシャ達は危険過ぎると反対するが、高級将校の命令だと、キーティング大尉自ら車両を運転し細い崖道を行く。ところが途中、車両は道を踏み外して谷底に落下。キーティングは亡くなってしまう。兵士達が落胆する中、新しい指揮官が到着する。そしてロメシャ達は自分達の基地が絶望的な場所にある事を再認識…そして悪夢の10月3日が…

アメリカがアフガニスタン撤退直前に製作された作品だが、アフガニスタン国内をボロボロにして撤退した理由の一端が分かる作品だと思えた。
日替わりの様に指揮官が変わって行く展開を段落の様に見せる内容も興味深かったが、なんと言っても10月3日に起きた銃撃戦がメインだと事前に聞いていた通り、タリバンとの戦闘シーンは余りの凄まじさに、生存者がいた事に驚く程の悲惨な展開。逃げ場の無い谷地とほぼ360°から来る攻撃に絶望感で途中息苦しさを覚えた。何よりそんな悲惨な銃撃戦を助長する序盤の緊張感のある展開と、胸糞悪い色々な出来事があるからこそ尚更作品としての面白さを感じた。
多少分かりずらかった部分も有るが、感情移入させる実際に戦った兵士達の名前とラストどうなったのかをエンドロールで見せられ、更に生き残った兵士達の話を聞けるだけに、一層胸が痛んだし、これが事実なのだと実感し強い衝撃も。ただ序盤戦友達との、たわいも無いやり取りや、心を通わせるシーンには、こんな絶望的で地獄の様な場所でも唯一の安らぎや優しさが垣間見れたのが救いにも思えたし、だからこそ、こんな酷い場所でも一緒に戦えるのだろとも思えた。
アフガニスタン紛争や今起きているウクライナ戦争の出来事は、ニュースなどで表層的な情報を得ることしか出来ないが、こう言う作品を見ると、色々な事が事実として理解出来、間接的とは言え色々と結び着くだけにとても見応えと興味を覚える作品だった。

これまでも色々な作品で強烈な戦闘シーンを観てきたが、本作はまた違った圧迫感と緊張感が有り、作品として楽しめた。
アメリカがアフガニスタンで何をしていたのか一部とはいえ知る事が出来るし、戦争映画としても中々秀逸な作品なので、興味がある人は是非。
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