このレビューはネタバレを含みます
「カムデシュの戦い」を描いた作品。
舞台となるのは、アフガニスタンのキーティング前哨基地。
四方を山で囲まれた立地は戦場としては最悪で、劇中の兵士達と同様に「どうして、こんな場所に建てた?」と頭を抱えざるを得ないものがありました。
シューティングゲームで遊んでいると、高地にポジションするだけでゲームが有利になりますからね。
そんなわけで、定期的にタリバンから攻撃を受けるわけですが、日常のふとした瞬間にいきなり銃撃されるのは恐ろしいものがありましたし、そんな状況に慣れてしまっているアメリカ兵にも異様なものを感じました。
タリバンからしたら敵が丸見えの状況なんだろうし、スナイパーを使えば、少なくとも1人は確実に殺せるはず。
私だったら、外に出るのも怖くて、精神も病んでしまうと思うのですが、本作のアメリカ兵は普通に日常を過ごしていて、こんな状況でも人間は慣れてしまうとは…。
そして、後半はタリバンの総攻撃を受け、後に「カムデシュの戦い」と呼ばれる戦闘が1時間近く描かれます。
案の定、防衛能力の脆弱さを露呈してしまい、後手後手に回るわけですが、身を隠す場所すらなく、反撃すらままならないという状況はなかなかに絶望的。
敵の銃弾が降り注ぐ中、それでも倒れた仲間を移動させたり、弾薬の補給に駆け回る姿が、長回しや縦横無尽なカメラワークを駆使して撮影されており、非常にスリリングかつ臨場感のある映像として楽しめました。
タリバンが近接戦に持ち込まなかった事、そして、アメリカ軍の航空攻撃もあって、何とか基地を守り抜いたものの、ボロボロになった基地から感じる虚無感たるや…。
こんな土地に基地を作った政府の無能さ無策さ、どれだけの価値があるかも分からない基地の為に命を落とした仲間達、最終的にアメリカがアフガニスタンから撤退した事も含めて、全てが虚しい。
この虚しさこそが、戦争の本質なのかもしれません。
大作と言うよりは、中規模な作品ではありますが、戦場のリアリティーや恐ろしさがしっかりと描かれ、反戦的なテーマやメッセージ性も込められており、戦争映画として質の高い作品と言えるでしょう。
キャストも意外と豪華で、個人的にはケイレブ・ランドリー・ジョーンズが印象に残りました。
こんな戦争映画に出るイメージはなかったし、役柄的にも一番感情移入し易いキャラクターだと思うので、是非注目して見て欲しいなと思います。